高校年代の選手やチームの物語を紡ぐ、不定期連載の第2回。今回は、昨年10月に『絶対王者』に猛攻を浴びて大敗した鳥取県の高校が、練習を重ねて実現を目指す、ジャイアントキリングへの意気込みに迫った。
新人戦は差を広げられる大敗
島根県出身で、地元の開星高から福山大に進んだ井上監督は、福山大、開星と母校でのコーチを経て、2018年に米子松蔭に赴任して監督に就任。地元の島根で圧倒的な実績を誇る立正大淞南高の南健司監督に教えを請うなどしながら、少しずつ力をつけていった。
米子北の城市徳之総監督や中村真吾監督とも以前から交流があり、練習試合をすることもあるとはいえ、いざ公式戦となればライバル。井上監督就任後、両校の初対戦は19年度の選手権予選2回戦で、0-7の完敗だった。
シュート数『1-53』の敗戦は2回目の対戦で、失点が6に減り、1得点を奪った。3回目の対戦は、約1カ月後の2020年11月。1・2年生のみで争われる新人戦で、米子松蔭は32年ぶりにベスト4に進出して米子北と対戦した。
米子松蔭は前回対戦の先発11人のうち、8人が今回も先発。開始9分(35分ハーフ)で先制されたが、前回同様に反撃に転じようとした。だが米子北は、選手権の全国大会を控える2年生レギュラーが不在にもかかわらず、スキを見せてくれない。
米子北のシュートを計27本に抑え、計5本のシュートを放ったが、結果は0-9。前半に5点、後半に4点を奪われ、縮めたかと思われた差を再び大きく広げられた敗戦を、井上監督はこう振り返る。
「選手権予選のときは力の差があり過ぎたので、守りを固めてカウンターを狙い、ウチが追い付いてからしばらくは、相手も高校生なのでバタバタしてくれました。でも新人戦は少し余裕があり、ボールを持つこともできた。そうなると、奪われたときにカウンターで一気に攻め込まれて、失点を重ねてしまいました」