J2で3位の水戸と4位の京都が、天皇杯2回戦で顔を合わせた。水戸は序盤、京都にテンポ良くパスを回され、攻め込まれる時間帯が続いた。それでも、粘り強い守備でシュートまでは行かせない。その後は徐々にボール支配率を回復させ、チャンスを作り出す。30分にはDF浜崎拓磨のスルーパスに反応したFW村田航一がシュートを放つも、京都のGK加藤順大に阻まれ得点できず、前半をスコアレスで折り返す。後半は一進一退の攻防戦となったが、アディショナルタイムに浜崎のクロスから村田がヘディングシュートを決め、先制。そのままタイムアップの笛が鳴り、水戸が3回戦へと駒を進めた。

上写真=天皇杯2回戦でプロ入り後初のフル出場をした平塚(写真◎J.LEAGUE ※リーグ第16節山口戦のもの)

■2019年7月3日 天皇杯2回戦
水戸 1-0 京都
得点者:(水)村田航一

大学1年時にプロのレベルを体感

 時計の針は90分を回っていた。水戸が右サイド(CK)から、左サイドから、立て続けにゴール前へとクロスを送る。いずれも京都DFにクリアされたものの、3度目でついにゴールへと結びつけた。クリアボールを拾ったMF平塚悠知が右サイドへ展開し、DF浜崎拓磨からFW村田航一へとクロスが送られ、次の瞬間、ゴールネットが揺れた。

 決勝ゴールの『起点』となったのは平塚のプレーだ。相手のクリアボールをなめらかなタッチで足元にピタリと止め、すぐさま右サイドへ展開。もしもここで些細なミスを犯していたら、京都の守備陣形は整い、クロスボールはまた跳ね返されていたかもしれない。正確な技術が、寸分の狂いもない一連のプレーを生み出し、ゴールへとつなげた。

 平塚は、今季札幌大から加入した左利きのゲームメーカー。この試合では4-4-2のボランチに入り、プロ初先発を飾った。90分を通しては、「チームを安定させるボール回しだったり、(ゲームを)組み立てることはある程度できたかなと思います」と、『司令塔』としての役割に手ごたえをつかみつつも、「ラストパスを出したり、シュートを打ったり、もっと前に出ていくことができれば」と、反省点も口にした。

 天皇杯の舞台は、4年前の大学1年時にも経験している。1回戦で当時J2の札幌と対戦。しかし、結果は1-5と完敗だった。「一番感じたのは、プレッシャーの速さ」と、プロのレベルの高さを体感した。

 それからもプロの世界を目指し、大学サッカーに打ち込んだ。「僕はあまり全国大会に出られる選手ではなかったので、自分で(Jクラブの)練習参加に行ったり」と、自らの足でプロへの扉を開けようとした。そして、唯一のオファーが水戸から届く。「すぐに決めた」とJリーガーになることを決断した。

「(水戸に加入して)良かった点はすごく多い。(サッカーに取り組む)環境は良いし、チームには若い選手も多くて、みんな仲良く、良い関係を築けています。全体に一体感があるし、人間的にも成長できていると実感しています」と、プロ1年目の充実ぶりを明かす。

 その中で、J2リーグを戦う水戸は、20節を終えて3位と好調だ。「(チームの)リーグ戦の好調ぶりが、良い意味でプレッシャーになっています。だから、ここ(天皇杯)で結果を残せたことは、次につながるかなと思います」。天皇杯2回戦とはいえ、J2で4位につける京都を破ったことは、平塚らリーグ戦で出場機会が限られる選手にとって自信となり、さらなるチーム力の向上にもつながるだろう。

「リーグ戦に出たい気持ちはあります。今は、それが一番ですかね。プロのプレッシャーだったり、雰囲気だったり、そういうものにはようやく慣れてきたし、今日の試合で90分通してやれた自信もある。これからもとにかく試合に出て、どんどんアピールしていきたいです。そして、将来的には“J1”で、安定して出られる選手になりたい」

 水戸の初昇格の切り札となり得る、北の大地が生んだ才能は、夢の舞台を目指してチームとともに成長を続ける。

取材◎小林康幸