歴史を学ぶ『日本サッカー温故知新』の第25回。この連載では日本サッカーが大きく発展した『平成の30年間』を写真と記録で振り返る。平成25年(2013年度)はサンフレッチェ広島が劇的な展開でJ1連覇を達成し、日本代表がブラジルW杯出場を決めた。

上写真=J1連覇を果たした広島の青山敏弘キャプテン(写真◎J.LEAGUE)

最後に横浜FMがシャーレ逃す

 シーズン序盤の主役となったのは大宮アルディージャだった。8節にはクラブ史上初のJ1リーグ首位に立つ。前年からの無敗をリーグ記録も21試合に伸ばした。だが、折り返しを過ぎて夏場以降は、8連敗を喫するなど失速。代わって開幕当初から上位争いを演じてきた横浜F・マリノスがリーグをけん引する。Jリーグ開幕20周年という節目のシーズンの覇者となるべく、力強く勝ち点を重ねていった。

 しかし、横浜FMも最後に足踏みしてしまう。サンフレッチェ広島と天王山と言われた29節の試合に勝利し、シーズン4度目の首位奪取を果たし、32節時点で2位浦和レッズに勝ち点4ポイント差をつけ、残り2試合で1勝すれば、自力優勝が決まる立場となったところまで良かった。だが、ホームに6万2632人の大観衆を集めた33節はアルビレックス新潟戦に敗戦。同じ33節に浦和レッズがサガン鳥栖に敗れ、セレッソ大阪も鹿島アントラーズに負けて優勝戦線から脱落。一方で広島が湘南ベルマーレに勝利し、この時点で順位は勝ち点62の横浜FMが首位、60の広島が2位、59の鹿島が3位となった。

 優勝の行方が3チームに絞られて迎えた最終節、依然として横浜FMの優位は変わらなかったが、アウェーの川崎フロンターレ戦で0-1の敗戦を喫する。そして広島はアウェーで鹿島との直接対決に勝利した。結果、広島が逆転優勝を飾り、連覇達成。横浜FMは9年ぶりのJ1制覇を逃した。

 振りが予想されるアウェーゲームで勝利を収めた広島の選手たちがカシマスタジアムで歓喜に沸く一方で、横浜FMのキャプテンとしてチームをけん引した中村俊輔は等々力競技場のピッチに突っ伏して涙を流した。その姿は勝負の世界の厳しさとリーグ優勝がいかに重く、難しいものかを物語っていた。

■平成25年度の主な出来事(2013年シーズン)

・2月23日 ゼロックス杯は広島が柏に勝利
・2月26日 Jリーグ理事会で14年からのJ3の立ち上げを承認
・3月2日 Jリーグ開幕
・4月20日 大宮がさいたまダービーに勝利。無敗記録を18試合に伸ばし、J記録を更新
・5月6日 楢﨑正剛がJ1で512試合出場。J記録を塗り替える
・5月11日 Jリーグ20周年記念試合を開催。浦和が鹿島に勝利
・6月4日 W杯アジア最終予選で日本がオーストラリアと引き分け、5大会連続5度目のW杯出場決定
・6月16日 東日本大震災復興支援Jスペシャルマッチを開催
・6月22日 コンフェデレーションズ杯で日本はブラジル、イタリア、メキシコに敗れ、3戦全敗でグループステージ敗退
・7月22日 レ・コン・ビンが札幌に加入。東南アジア初のJリーガーが誕生
・7月28日 東アジアカップで日本が初優勝。女子は3連覇逃す
・8月7日 インターハイは市立船橋高が優勝
・9月1日 なでしこリーグ杯でINACが初優勝
・9月17日 J理事会で15年からの、2ステージ制およびスーパーステージ&チャンピオンシップ開催を決定
・10月10日 手倉森誠氏がリオ五輪出場を目指すU-21代表監督に就任
・10月13日 なでしこリーグ1部はINACが3連覇
・11月2日 ナビスコ杯は柏が14年ぶりに制覇
・12月6日 ブラジルW杯の組分け決定。日本はコートジボワール、ギリシャ、コロンビアと同じC組に
・12月7日 広島がJ1優勝。クラブ初のリーグ連覇を達成
・12月8日 INACが国際女子クラブ選手権で優勝
・12月11日 本田圭佑がミラン(イタリア)に移籍
・12月15日 高円宮杯(U-18)チャンピオンシップは流通経済大柏高が優勝
・12月22日 大学選手権で大阪体育大が28大会ぶりに優勝(第62回)
・12月23日 皇后杯でINACが4連覇達成(第35回)
・14年1月1日 天皇杯は横浜FMが21年ぶり7度目の優勝(第93回・13年度)
・14年1月13日 高校選手権で富山一高が初優勝(第92回・13年度)

最終節の鹿島戦で2得点を挙げた広島の石原直樹(写真◎J.LEAGUE)

最終節で横浜FMを逆転し、J1連覇を成し遂げたサンフレッチェ広島(写真◎J.LEAGUE)

最終節で川崎Fに敗れ、優勝を逃した横浜FM。試合終了直後、中村俊輔はピッチに伏せて涙を流した(写真◎J.LEAGUE)