歴史を学ぶ『日本サッカー温故知新』の第6回。この連載では日本サッカーが大きく発展した『平成の30年間』を写真と記録で振り返る。平成6年度(1994年度)は一人のサムライが海を渡り、新たな扉を開いた。

上写真=ジェノアに期限付き移籍したカズがミランとの開幕戦でデビューも負傷し1か月離脱。通算成績は21試合1得点だった(写真◎サッカーマガジン)

ファルカン政権は8カ月で幕

 ワールドカップ・アメリカ大会に出場することはできなかったものの、世界の扉を個人で開かんとする選手が現れた。当時世界最高峰と言われていたイタリアのセリエAにカズが挑戦したのだ。ヴェルディ川崎からジェノアに移籍。これはアジア人としても初の快挙だった。

 さらに、若きサムライたちも世界の舞台を踏む。安永聡太郎(清水商)らU-19日本代表がアジアユースで準優勝して翌年開催のワールドユースの出場権を獲得。男子の代表チームが世界大会に出場するのは、1968年のメキシコ五輪以来のことだった。U-16代表も続き、カタールで開催されたU-17アジア選手権では、初めて優勝した。

 ただ一方で、A代表は停滞期を迎えていた。ファルカン新監督率いるチームは広島アジア大会で8強どまり。わずか8カ月で指揮官の退任が決まっている。

 Jリーグでは、タレント軍団と言われたヴェルディ川崎がチャンピオンシップでサンフレッチェ広島を下して連覇を達成。また、天皇杯ではこのシーズンからJリーグに参入したベルマーレ平塚(現湘南ベルマーレ)がセレッソ大阪を下して優勝を飾った。

 全国高校サッカー選手権でも新王者が誕生した。1年生ながら6得点を挙げた北嶋秀朗や決勝でハットトリックを決め、8ゴールで大会得点王に輝いた森崎嘉之らを擁する市立船橋高が帝京高を5-0で下し、8度目の挑戦でついにタイトルを掲げた。

■平成6年度の主な出来事(1994シーズン)

・3月5日 V川崎がゼロックス杯優勝
・3月7日 延長サドンデス方式をVゴールに名称変更
・3月10日 日本代表監督にファルカン氏が就任
・3月12日 Jリーグ開幕
・3月27日 全日本女子選手権はベレーザが5年ぶり3度目の優勝(第15回・93年度)
・4月8日 02年W杯での日本と韓国の共催案が浮上
・5月22日 ファルカンジャパンの初戦はオーストラリアと対戦。1-1の引き分けに終わる
・5月28日 日本サッカー協会会長に長沼健氏が就任
・6月11日 広島がサントリーステージ制覇
・7月23日 オールスター開催。6月21日に現役引退したジーコの引退セレモニーが行なわれる
・8月7日 V川崎がナビスコ杯3連覇を達成
・9月4日 ジェノアに移籍したカズがセリエAデビュー
・9月4日 高円宮杯(U-18)は清水商高が決勝で読売ユースに勝利し、2年連続優勝を果たす
・9月23日 U-19代表がワールドユース出場権を獲得。アジアの壁を破る快挙は68年メキシコ五輪以来
・10月3日 アジア大会。日本は初戦でUAEに勝利
・10月11日 アジア大会(広島)で日本はベスト8敗退。大会終了後にファルカン監督が解任される
・10月31日 横浜Fを率いていた加茂周監督の日本代表監督就任を発表
・11月1日 U-16アジアユース選手権(カタール大会)で日本は初のアジア制覇
・11月15日 柏、C大阪のJリーグ昇格が承認
・11月16日 V川崎がニコスシリーズ優勝
・11月27日 大学選手権は早稲田大が2連覇
・12月2日 チャンピオンシップでV川崎が広島から連勝を収め、2年連続でリーグ王者に
・12月4日 ジェノアのカズがセリエA初ゴール
・12月18日 第6回日本女子リーグは松下が初優勝。同大会から略称が「Lリーグ」に
・12月27日 ミスターマリノス木村和司が引退発表
・95年1月1日 平塚がC大阪を下して天皇杯制覇(第74回・94年度)
・95年1月8日 市立船橋高が8度目の選手権挑戦で初優勝(第73回・94年度)

3月に日本代表監督に就任したファルカン(スーツ姿の男性)。8か月の短命政権に終わった(写真◎サッカーマガジン)

カズの得点で先制しながら韓国に逆転負け。アジア大会は8強で敗退した(写真◎サッカーマガジン)