6月21日に「今シーズン限り」での現役引退を発表した鳥栖のフェルナンド・トーレスが、23日に東京都内で引退会見を開いた。会見場に現れたトーレスは、8月23日のJ1神戸戦が現役ラストマッチになることを明かし、引退後もクラブに残ることや、華々しい18年間のプロキャリアを振り返っての心境などを語った。

自らが明かす『8月24日以降』

「ただ、これはお別れではありません」

 そう放ったトーレスの一言は、日本の多くのファン・サポーターにとって、引退の寂しさを少しは和らげることになったのではないだろうか。「(クラブの)竹原(稔)社長からオファーをいただき、今後はアドバイザーとしてサガンを支えていくことになります。サガンが日本を代表するビッグクラブになるように、今後もサポートしていこうと思います」と、トーレスは自らの口で引退後も鳥栖に残ることを明言した。

 会見に同席した竹原社長も、「チームは今も苦しい状況を強いられていますが、フェルナンドと一緒に乗り越えていき、8月24日以降の新しいプロジェクトに向かいたい」と、トーレスと鳥栖の未来について話した。

トーレス(右)の引退に寂しさを募らせつつも、引退後もクラブに残ることを明言した鳥栖の竹原社長(写真◎サッカーマガジン)

 アドバイザーとしては、「クラブを、組織として改革していきたい」と言うトーレスだが、その中でも「特にユースチームなど、若い選手の育成に目を向けていきたいと考えています」と、育成に携わっていくことを示唆した。「コーチ業や監督業などはこれから学んでいかなければいけない」と口にし、「鳥栖のユースチームなど、アカデミー(育成組織)には素晴らしい選手がたくさんいます。彼らを成長させることで、よりクラブを大きくしていきたい」と、自らが思い浮かべる鳥栖の青写真を明かした。

 そして、アカデミーの重要性を語るトーレスの言葉に熱がこもる。

「日本には才能のある若い選手がたくさん眠っています。今は(アカデミー育ちの)ダイキ(松岡大起)などがトップチームで活躍していますが、彼らがより成長するためにはアカデミーの存在が重要です。チームの基盤を作るのは、そのクラブで育った選手であり、彼らのクラブへの愛情なのです。所属クラブに対する気持ちの強さは、プレーに影響します。そして、私の役目はそういう若い選手たちのメンタリティーを変えること。トップチームでプレーする選手は、年齢に関わらずトップチームの選手なのです。周りの目を気にして遠慮したりせずに、自分の持っているすべての力を発揮しなければいけません。例えば、ヨーロッパの若い選手たちは、自信を持って堂々とプレーしています。そこは見習うべきところではないかと。日本の選手にも才能があるので、もっと自信を持ってプレーしてほしいし、そのための環境を作ることが、私たちのやるべきことなのではないかと考えています」

 鳥栖のアカデミーは、U-20日本代表のFW田川亨介(現FC東京)や松岡大起ら、若手の有望選手を育てた実績を持つ。トーレスは日本人の豊かなタレント性を強調しつつも、自身が育ったヨーロッパの環境と比べると改善点も多いことも指摘する。そのため、「8月24日以降」に鳥栖のアカデミーでトーレスがどのような改革に乗り出すのか、注目が集まる。