6月21日に「今シーズン限り」での現役引退を発表した鳥栖のフェルナンド・トーレスが、23日に東京都内で引退会見を開いた。会見場に現れたトーレスは、8月23日のJ1神戸戦が現役ラストマッチになることを明かし、引退後もクラブに残ることや、華々しい18年間のプロキャリアを振り返っての心境などを語った。

ラストマッチは盟友との対戦に

 その目は、2カ月後の“ラストマッチ”に向いている。会見の席でトーレスは、「8月23日のヴィッセル神戸戦(J1第24節・駅スタ)がラストマッチになります。古くからの友人であるアンドレス・イニエスタとの対決で、自分のサッカー人生を終えます」と、公言した。

「ダビド・ビジャもそうですが、ヴィッセル神戸には一緒にスペイン代表として戦い、多くの歴史と思い出を作ってきた親友がいます。だから、その試合で選手としてのキャリアに終止符を打つのがふさわしい」

Jリーグの舞台でイニエスタと対戦するトーレスの姿を見られるのも、8月23日が最後となりそうだ(写真◎Getty Images)

 トーレスとイニエスタは、数奇な運命にある。同じ1984年に生まれた同級生の二人は、それぞれアトレティコ・マドリードとバルセロナという名門クラブで成長し、育成年代のスペイン代表に名を連ねた。そして、ともにA代表の主力となり、母国にヨーロッパ王者と世界チャンピオンの称号をもたらした。EURO2008のファイナルで決勝ゴールを決めたのはトーレス、その2年後の2010年南アフリカ・ワールドカップで決勝点を挙げたのはイニエスタ。この二人なくして、スペインが栄光を手にすることはあり得なかったかもしれない。

 そして、二人がスペインを離れ、日本での新たなキャリアをスタートさせたのも同じタイミングだった。昨年7月10日にスペイン・マドリードで鳥栖加入を発表したトーレスは、その5日後に来日。また、同年5月に日本で神戸加入を発表していたイニエスタも、ロシア・ワールドカップを終えた7月18日にチーム合流のため再来日した。

 奇しくも、ともにJリーグ・デビューは7月22日。世界王者に輝いた二人の偉大な選手がそれぞれの試合でJリーグのピッチに立つ、歴史的な日となった。『KOBE』と『TOSU』の名が世界中のメディアを賑わせた。8月11日にイニエスタがJ初ゴールを決めると、それから2週間後にトーレスも続くなど、ともに日を追うごとにチームを引っ張る存在となっていき、キャプテンマークも巻いた。

「Jリーグは選手にとって、非常にエキサイティングな舞台です。日本に来たときから、自分自身のベストを尽くすべく戦ってきました」(トーレス)

 トーレスと同様に、今季はイニエスタも継続的に試合に出られていない。第16節まででは、トーレスよりも少ない10試合に留まっている。だが、盟友の花道を飾るべく、イニエスタもまた8月23日の一戦に向けて調整してくるだろう。「2カ月後、私がピッチを去るころには、Jリーグに関心を持つ人がさらに増えていることを願います」(トーレス)。全世界の注目を浴びる特別な一戦となりそうだ。

スペイン代表でともに戦ったイニエスタを擁する神戸との試合が現役ラストマッチとなる(写真◎Getty Images)