上写真=都内のホテルで入団会見を行なったセルジ・サンペール。背番号は6に決まった(写真◎ヴィッセル神戸)

 3月7日、都内のホテルでヴィッセル神戸が会見を開き、FCバルセロナ育ちのMF、セルジ・サンペールが完全移籍で加入すると発表。本人も登壇し、調印式を行なうとともに、入団に至った経緯と決意を語った。バルサ化を進める神戸にとって、その加入はどんな意味を持つのか?

「結果を出すことが私の使命」

【動画】神戸の新戦力・サンペールが都内で加入会見!

 ヴィッセル神戸はかねてより、FCバルセロナのようなスタイルを標榜し、それを実践すべく補強を図ってきた。アンドレス・イニエスタの獲得に始まり、ジュゼップ・グアルディオラ(現マンチェスター・シティ監督)が師事したことで知られ、『ボール保持』の信奉者でもあるフアン・マヌエル・リージョ監督を招へい。バルセロナでプレー経験を持つFWダビド・ビジャも今季からチームに加わっている。

 そしてこの日、バルセロナの下部組織育ちのサンペールの入団が決まった。現在、本家バルセロナの中盤で攻撃を仕切るセルヒオ・ブスケツ二世とも言われたプレーメーカー。トップチーム昇格後はケガもあり、なかなか本領を発揮できなかったが、イニエスタや三木谷浩史会長から話を聞き、「ヴィッセル神戸のプロジェクトを素晴らしい」と感じて今回、移籍を決意したという。

「ヴィッセル神戸のユニフォームを着られることはとても名誉なことです。ヴィッセル神戸のプロジェクトに参加をして結果を出していくことが私の使命だと思っています。もちろん、かつての同僚であるイニエスタがプレーしているチームなので、彼に会うのはとても楽しみです。そのほかにもルーカス・ポドルスキ選手ら世界的な有名な選手が活躍していますし、日本の選手でも山口蛍選手をはじめ、素晴らしい才能を持ったプレーヤーが活躍しています。私もその一員としてこれからプレーできることをとても楽しみにしています。
 また、神戸のスタジアムでプレーすることも楽しみです。数カ月前に僕の兄弟がスタジアムを訪問して『素晴らしい施設で凄いところでプレーできる』と話してくれました。そう聞いて以来、とても楽しみなんです」

 まだ24歳と若く、全盛期を迎えるのはこれからという年齢で、しかもバルセロナのDNAを持つプレーヤー。その点について三木谷会長も大いに期待していると語り、「Jリーグの新しい1ページになる」とも話した。

足りなかった仕切り役になり得る

 将来性もさることながら、現時点でもその存在が神戸にとってプラスに働くと思うのは、サンペールが現チームに不足していた部分を補い得るタイプだからだ。

 リーグ戦は2試合を消化し、神戸は1勝1敗で五分の星だが、その内容に目を向けると、最終ラインから豪華な前線へとボールをつないでいく過程に問題を抱えていた。ボール奪取後にパスの循環が滞るケースがあり、結果、前線に良い形でボールが入らないこともあった。
 ボランチを務める山口蛍や三原雅俊は幅広く動いてボールを奪うことに長けている一方で、大きく動くために最終ラインの預けどころにならず、組み立てに加われないことがある。そもそもプレーメーカータイプでもない。その点を踏まえても、中盤で攻撃を仕切れるサンペールが加わったのは大きい。

 さらに、これまではイニエスタが下がってボールに触れ、攻撃の組み立てに加わることもあったが、イニエスタをよりゴールに近い位置でプレーさせる意味でも、ボールの配り手が別にいることはチームにとってプラスだ。

 バルセロナ出身でかつて横浜フリューゲルスを指揮したカルロス・レシャックは、バルサ色の濃いチーム作りを進める中で、ボランチの山口素弘(現名古屋グランパス・アカデミーダイレクター)に「センターサークルから動くな」と、当時バルセロナでプレーしていたグアルディオラを例に出しつつ話したという有名なエピソードがある。グアルディオラ二世と呼ばれるブスケツの、そのまた二世と呼ばれるサンペールが神戸で求められるのも『チームの中心で仕切る』役割だろう。

 むろん、サンペールが加わっただけですぐにバルセロナのようなプレーが実現するわけではない。日本人選手たちもリージョ監督の考えを理解し、実践することが必要だ。ただ、サンペールの加入で組み立てからフィニッシュに至るまで、一応の形が整った印象を受ける。

「アンドレスが電話をくれたとき、神戸がいかにバルセロナという街に似ているか、そして『君が神戸に住めば、きっと気に入るよ』と言ってくれました。『チームについては神戸はバルサと同じようなプレースタイルを標榜するから、君がこちらに来ても何にも困ることはないだろうし、君にとって素晴らしいサッカー人生のステップになると思うと言ってくれました」

 昨季、レンタル移籍先のラスパルマスでケガを負って本領発揮とはいかず、バルセロナに復帰した今季もスペイン・リーグでは出番がなかった。気になるのは試合勘も含め、現在のサンペールの状態だが、本人はイニエスタとともにプレーできる新天地での活躍を強く誓う。
 バルサ化計画の中心となり、神戸が掲げる『アジアナンバー1クラブになる』という目標に向かう原動力になれるか。そのプレーが注目される。

取材◎佐藤 景 写真◎ヴィッセル神戸、BBM