U-24日本代表は3日、U-24スペイン代表と準決勝で対戦し、壮絶な戦いを演じながらも0-1で敗れた。金メダル獲得という目標は4強で潰えることになったが、まだ大会が終わったわけではない。林遼平氏による短期集中連載『蹴球五輪雑記』の第6回は、筆者が見たスペイン戦の直後の選手たちの様子と、思いの詰まった『言葉』について綴る。

上写真=スペイン戦の終了直後。ピッチに横たり、空を見つめる吉田麻也(写真◎Getty Images)

文◎林 遼平 

「メダルをとって日本の皆さんと一緒に喜べれば」(田中碧)

 粘り強く戦いながら常にゴールまでの道筋を探していた。耐えて、耐えて、迎えたチャンスを決め切る。チームとしての狙いは明確だった。

 しかし、延長後半115分。スローインから全ての対応が後手となり、一瞬の隙を突かれて失点。自国開催での金メダルを目指していた日本にとって、その夢は準決勝の舞台で潰えることになった。

 悔し過ぎる敗戦。それは試合後の選手たちの言葉を聞けば明らかだった。

「最初から自分たちにできることをやって、守備をしつつあわよくば1点という試合をやっていたけど、そのあわよくば1点が凄く遠かったと思います」(久保建英)

 涙を浮かべながら喋る選手がいた。言葉に詰まる選手がいた。あと一歩まで相手を追い詰めていたからこそ、結果がついてこなかった喪失感に襲われていた。

 ただ、まだ全てが終わったわけではない。金メダルの夢は散ってしまったが、メダリストになるチャンスは残っている。

 試合後、オーバーエイジの吉田麻也と酒井宏樹は若い選手たちに思いを伝えた。ロンドン五輪の後悔を繰り返したくないと。ここで燃え尽きてしまうのではなく、メダリストになるためにもう一度奮い立つべきだと。

「ロンドンの時、準決勝でメキシコに負けて燃え尽きてしまった感があった。そうではなくて、やはりメダリストになりたいです。そこはみんなそうだと思う。このメンバーでやれるのは、次が最後の試合になる。これが終われば、正直、上にのし上がっていく選手もいれば、結果が出なくて燻ってしまう選手も出てきます。それがプロだと思うし、できればみんなとまた同じ上の舞台で戦いたいですけど、そんなに甘い世界じゃない。この世代、本当にいいチームだと思うので、何としても最後、勝たせて終わらせてあげたいなと思います」(吉田)

 金メダルを目指してきた選手にとって、すぐに頭を切り替えるのは簡単なことではない。これだけの連戦と延長戦を2試合続けてフィジカル的にも難しい状況にある。それでも、ここでメダルという結果を残さなければ、今後に語り継がれるようなチームになることはできない。

「このチームの可能性を信じているというか、やはり力のある選手たちがたくさんいる。もう何を言っても金ではないのでどうしようもないですけど、メダルを取られなければ(このチームの奮闘が)忘れられてしまう。本当にいいチームなので、メダルをとって皆さんの心の中に残るようなチームになりたいなと思うし、なれると思う。最後、もう一回一つになって、メダルをとって日本の皆さんと一緒に喜べればいいのかなと思います」(田中碧)

 中2日で迎える3位決定戦。心と頭を整え、勝って笑顔で終える大会にしてほしい。

著者プロフィール◎はやし・りょうへい/埼玉県出身。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。その後、フリーランスに転身。サッカー専門新聞「エルゴラッソ」の番記者を経て、現在は様々な媒体で現場の今を伝えている


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