東京オリンピックに臨むメンバー選考もいよいよ大詰めだ。6月12日のジャマイカ代表とのテストマッチがその最後。三笘薫は自身を「この1試合に左右される立場」と現在地を冷静に見極めている。自慢のドリブルはもちろん、コンビネーションとディフェンスでも自分らしさを見せて、ジャマイカ戦に挑むつもりだ。

上写真=U-24ガーナ代表戦では最後を締める6点目を決めて、存在感をアピールした(写真◎JMPA増田泰久)

「行けるか行けないかの世界」

 奪えたゴールより、奪えなかったゴールが心残りだ。

 6月5日のU-24ガーナ代表とのフレンドリーマッチ。堂安律、久保建英、上田綺世、同じ左サイドハーフでポジションを争う相馬勇紀と、先発したFWとMF全員がゴールを決めていた。東京オリンピックに出場できる18人という狭き門を突破するため、58分からの登場となった三笘薫にもゴールが求められた。

 それを現実にしたのが89分のことだった。田中碧、遠藤航、田中、食野亮太郎と渡った軽やかなワンタッチパスの連続で中央突破、最後は三笘が相手を右にかわしてゴール右に流し込んだのだ。

「(プレー時間が)30分ある中で、他にも決定機がありましたし、そこで決め切れていないことも事実です。最後は相手が足を滑らせたので運もあると思います。中盤で作ってくれて最後に決めるところだけでした。決めることも大事ですけど、いろいろなところでチャンスを逃したので、そこは改善していきたい」

 川崎フロンターレの一員としてJ1を席巻してきたドリブル突破は、この日も自分では納得がいっていない。

「サイドの仕掛けの部分で何度もミスをして取られるシーンがありました。サイドの選手なので、行けるか行けないかの世界だけど、もっとチャンスを作り出して得点にからみたいと思います」

 3月のU-24アルゼンチン代表戦で思うようにドリブルがはまらず、その点を自分で課題に挙げてきた。このガーナ戦でも同じように満点回答とはいかなかった。

「結果を出さないと落ちると思っています」

 川崎Fでトライしていることはほかにもあって、開幕前から話していたのがゴール前に入ってフィニッシュ役を担うこと。つまり「ストライカー化」だ。

 このガーナ戦でも右サイドハーフの堂安律とトップ下の久保建英が自由にポジションチェンジして、右から魅力的な攻撃を構築していた。右で作って左で刺す。そのために、三笘が取り組んできた「ニアゾーンまで入り込むこと」ができれば、最高のコンビネーションが生まれるかもしれない。

「川崎ではウイングのポジションで、ある程度、高い位置を取るので、ゴール前に入っていきやすいけど、今回はフォーメーションも違うし、より後ろからスプリントで入っていかないといけない。そういった違いがあります。もちろん右サイドにあるときも左サイドにあるときもオフ・ザ・ボールの動きで裏に抜け出すのはうまくなってきていると思うので、そこも出していきたいと思います」

 川崎Fでは4-3-3の左ウイング、U-24日本代表では4-2-3-1の左サイドハーフ。似ているようで異なる役割を、どこまで消化して表現していくか。

 そのためにも、三笘は守備をする。

「特に前線の守備は求められますし、強度やスピードを生かしてボールを取るところは出していきたい」

 ウイングとサイドハーフの大きな違いは、守備で担当するエリアだと話してきた。どちらにしても、川崎Fで見せているのと同じように攻撃だけではなく守備でそのスピ ードを生かせれば、それも「三笘らしさ」である。

 そうして奪ったボールで仕掛ける。

「ドリブルで仕掛けることは多かったですけど、最後の(ゴールの)シーンのように近い距離感でワンタッチ、ツータッチで崩していければ、ああいうプレーを生み出せる選手が多いですし、川崎でもやっているので、出していければ脅威になるかなと思います」

 6月12日のジャマイカ戦が、選考までのラストゲームになる。

「結果を出さないと落ちると思っています。この1試合に左右される立場だと思っているので、プレッシャーをかけてやらないといけないですし、練習からアピールしていかないといけないと思います。オリンピックに出ることへの意志の大きさがプレーに表れてくると思うので、そういったところを出してアピールしたいと思います」

 そのドリブルと攻撃センスが世界に通用することを知らしめるための、最後の戦いが待っている。


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