上写真=ボランチで先発した佐野海舟。持ち味を存分に発揮した(写真◎毛受亮介)
守備で魅せて、攻撃でも得点に絡むプレーを連発
ボランチとして先発し、ピッチを縦横無尽に駆けた。そもそもボール奪取能力は高い評価を得ていたが、インドネシア戦では奪って前に出るプレーに加え、スペースに走り込んでボールを引き出したり、前線の選手と積極的に絡むプレーでも魅せた。
「(前への飛び出しは)自分の良さでもあり、課題でもあるので。そこの良さを出して。でも今日も得点というところはできなかったので、そこはまだまだ課題かなと」
そういって佐野は得点チャンスを生かせなかったと悔やんだが、それ以外の部分、とくにあらゆるところに現れる運動量には目を見張るものがあった。ブンデスリーガで総走行距離1位を記録したのは伊達ではない。
チャンスを広げるためのチャレンジングなパスも積極的に出し、ボックス内へ走り込んだ。鎌田大地が決めた先制の場面では、左サイドでパス交換に加わり、鎌田同様、ボックス内へしっかり走っている。
鎌田が決めたチームの3点目の場面では、右サイドに開き、カットインしてくる久保建英からボールを引き取ると、斜めに走る久保にタイミングよく戻して、鎌田へとパスがつながり、ゴールは生まれた。
町野が決めたチームの5点目の場面はとくに印象的だった。佐野は高井幸大の縦パスを半身になりながら右足でトラップし、一気にスピードアップ。ドリブルで前線まで運んで相手DFを背負う町野にパスを付けた。その落としを久保が拾って浮き球パスにつなげ、最後は町野がシュートを決めたが、一連の連係の中で、高井からのパスを即座に前に運んだ佐野のプレーが効いていた。
ボランチコンビを組んだ遠藤航は「自分は常に真ん中にしっかり構えながら、彼は機動力を持って前にかかわっていくタイミングがあればどんどん出ていくっていうところを意識していたと思う」と佐野についてコメント。「僕自身はそんなにやることはいつもと変わらないというか、彼の良さをしっかり生かしてあげられるポジショニングや関係性は意識した」とも振り返った。佐野の特徴を出すことがチームにプラスになると判断していたのだろう。
61分からは弟の佐野航大が三戸舜介に代わってプレーし、兄弟が同時にピッチに立った。日本代表で兄弟がそろってプレーするのは19年ぶりの快挙だが、「別に何もないですけど、お互いまだまだここからの方が大事だと思う。試合が終わってからも話しましたけど、お互い得点できるチャンスがありましたし、ああいうところをどんどん決めていかないと、この先、上には行けない」と反省の方が大きかった。
今回の活動は1年2カ月ぶりの復帰だった。不起訴処分になったものの、事件に関わったことに対する批判の声はある。
「自分ができることは限られているので、それを全力でやり続けるだけです」
そう佐野は、言った。
インドネシア戦のプレーについては森保一監督も「トレーニングの回数がインドネシア戦に向けてより長く、オーストラリア戦の成果と課題があったことで、海舟自身はプレーを、よりクリアに表現できたと思います」と評価。
佐野はこれからも目の前の試合に全力で臨み、プレーで、姿勢で、そして行動で自らの価値を示していく。