3月24日、日本代表はアウェーの地で大一番を迎える。カタールW杯出場権をかけて、アジア最終予選のオーストラリア戦に臨むのだ。ここではJリーグの各クラブでアナリストを務め、2019年には横浜F・マリノスの優勝に貢献した杉崎健氏に、注目の一戦のポイントについて解説してもらった。

上写真=昨年10月の対戦は日本が2-1で勝利。伊東のスピードが相手を苦しめた(写真◎Getty Images)

立場が逆転した中で迎える『再戦』

――いよいよ明日、オーストラリア戦を迎えます。日本は当初、招集予定だった大迫勇也、酒井宏樹、前田大然が欠場することになりました。

杉崎 まず今回のメンバー招集に関して言えば、「いつも通り」でした。そう言うとマイナスに聞こえるかもしれませんが、選考基準が変わっていないということですし、リーグ戦でしっかりやれている選手が選ばれている。抜擢を期待する声があったようですが、そこはこれまでの基準通り選んだのだと理解しています。

――追加招集は林大地と中谷進之介でした。

杉崎 長友佑都、中山雄太、佐々木翔と左サイドバック候補を3人選んでいましたが、一つ気になっているのは、長友が所属するFC東京で右サイドバックでプレーしている点です。左右ではやはり景色が異なります。佐々木はシステムは違いますが左をやっている。直前の試合でフル出場しましたが、仮に長友のコンディション面に加え、現在進行形で右サイドでプレーしていることによって代表に合流して練習を見たときに「ん?」と感じるようなことがあった際にどうするのか。先発は中山、途中から佐々木という交代策も含めて、考えているのではないかと思います。高さも含めて、ここはリスクマネジメントの選出だったと。

――なるほど。

杉崎 一方で酒井が不参加となった右サイドは山根視来だけになりましたが、代わりに呼んだのは中谷。CBの選手です。今回、室屋成を招集しなかったことを考えれば、長友の右も考えているのかなと思います。招集メンバーを見ると、最終ラインの人選はいろいろと想定していることが伝わってきました。

――CBコンビについてはどう見ていますか。前節は吉田麻也と冨安健洋が不在のなか、谷口彰悟と板倉滉が好プレーを見せました。

杉崎 CBは吉田は軸になっているので、右CB吉田、左CB谷口でいいのではないかと思います。ビルドアップ面を考えると、クラブでも右CBを務めていることもあり、吉田の左は考えにくいですし、板倉滉の左も考えにくい。川崎Fで左CBでプレーする谷口は左足も使えますし、吉田と組むのがスムーズではないかと思います。

――1月の中国戦、2月のサウジアラビア戦ではビルドアップ面で谷口選手が最終ラインで存在感を示しました。そもそも左足のワンタッチで前につけられるのは大きいと思います。今回のメンバー構成から他に感じていることはありますか。

杉崎 システム的に今回も4-3-3だとは思いますが、うまくいかなかったときのセカンドオプションがあるかどうか。メンバーを見たときに、どう変化させられるのか、という点は少し不安なところがあります。

――具体的に言うと?

杉崎 今の4-3-3のなかでアクシデントが起きた際にも、人を入れることはスムーズにできそうだと感じます。左に三笘薫を入れるとか、インサイドハーフに原口元気を入れるとか。ただ、劇的に何かを変えなければいけない状況に陥ったときに、何ができるのかというところでメンバーを見ると、大きな変化はあまり想定していないようにも映ります。

――これまでの流れから想像するに、4-2-3-1に変更してトップ下、久保建英のようなことはあり得るかなと思いますが。

杉崎 鎌田大地を選んでいないということは4-2-3-1もそこまで想定していないとも思えますし、久保をトップ下に入れるにしてもクラブでは今、両サイドハーフしかやっていないと。確かに経験はありますし、東京五輪でもプレーしていました。ただ、想定される組み合わせで4-2-3-1が果たして機能するかな、とも思います。また、点を取らなければいけない状況になって、例えば3バックにして前に圧力をかけるとなったときには、それをできる3CB+ウイングバックは誰だろうと。選手一人ひとりの能力はもちろんありますが、4-3-3をベースで組んでいるとして、変化をどう生み出すのか。そこは気になるところです。

――パーツ交換による変化は可能でもチーム全体が変わることは難しいと。

杉崎 昨年11月のオマーン戦のように三笘が出てきて変化を加えることはできるでしょう。ただ、その手の内は知られてしまっている。カラチッチもそこは簡単にプレーさせないはずで、その中で日本にどんな手があるのか、注目したいと思っています。前回のオーストラリア戦は日本がフォーメーションを変えて臨み、そこから連勝が始まりました。順位的にも、今回は前回と立場が逆転した中での戦いです。オーストラリアが何かをして来ても不思議ではありません。


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