ベトナム戦で中山雄太は30分あまりプレーし、徐々にその存在感を高めている。自身にとって初めとなるW杯アジア最終予選でも、難しさを感じることなく、「このまま突っ走って行ければ」と話す。前節を振り返り、今後に向けた意気込みを語った。

上写真=11日のベトナム戦では63分から出場した中山雄太(写真◎JFA)

ビルドアップを安定させたいと

 ベトナム戦の63分に長友佑都に代わって左サイドバックとしてピッチに登場した。1-0でリードしている状況ながら追加点が奪えないチームを活性化することを託されていた。「失点は絶対にしてはいけないという意識と、自分の特長であるビルドアップでチームを安定させたいと思っていた」。試合後に森保一監督が明かしたところによれば、中山には同時に投入したスピードスターの浅野拓磨の速さを生かすことも期待されていた。

 そもそも4-3-3はピッチ上に複数の三角形を描きやすいフォーメーションだが、サイドバックの位置取りも大きなポイントになる。中盤の3人、とりわけ同サイドのインサイドハーフとの関係性、そして左ウイングのポジションを見つつプレーすることが求められる。時に外側に、時に内側に立ってボールを循環させることが必要だ。長友は大外を駆けてチームの攻撃に厚みを加えることを得意にするタイプのサイドバックであり、一方で中山はボールの預けどころになり、循環させることができるタイプ。「ビルドアップを安定させたい」と話した通り、本人も自身の持ち味をしっかり自覚している。

 ただし、ベトナム戦は途中出場であり、それまでのバランスを崩さないにように気を配っていたようだ。「僕が入る時点で拓磨くんが同時に入るタイミングだったので、僕らがフレッシュさを出すあまり、中にいた選手との間にギャップが生じないように、僕らだけが攻め急がないように全体のバランスを意識した」という。最も重要なのは勝ち点3を取ることであり、遮二無二、ゴールを取りにいくことではない。状況を見極めつつ、まずはパスワークを安定させ、リスクを管理しながら1点を取りにいった。

 A代表での出場機会はまだまだ多くはない。年代別代表に名を連ね、東京五輪にも出場したものの、W杯の最終予選は今予選が初めてになる。とはいえ、その難しさについて本人はポジティブに受け止めている。「僕はまだ分かっていないし、その難しさを知らないまま突っ走っていければとも思います。危なくなったらベテランの選手がうまく手綱を引いてくれると思うし、逆に知らないぶん突っ走って行ってもいいのではとも思っています」。チームコンセプトの中で自分の持ち味を出すことが、チームの貢献につながるとの思いがある。

 10月のサウジアラビア戦もオーストラリア戦も出場時間は数分間に限られたが、ベトナム戦ではアディショナルタイムも含めて30分以上プレーした。助走を終えて、いよいよ本格的に走り出すことができたのかもしれない。田中碧の例を挙げるまでもなく、チームを活性化し、勢いをもたらすのは新たな選手の台頭だ。中山は、その可能性を感じさせる一人だろう。


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