日本代表は25日、神奈川・日産スタジアムで韓国と国際親善試合に臨んだ。国内の代表戦としては1年4カ月ぶり、韓国との親善試合となると、2011年8月以来およそ10年ぶり。コロナ禍に実現した貴重なライバルとの対戦で日本は躍動し、前半のうちに山根視来、鎌田大地が決め、後半には遠藤航がダメ押し。攻守に持ち味を発揮して完勝した。

上写真=代表デビュー戦にしてゴールを挙げた山根視来。均衡を破る先制点だった(写真◎小山真司)

■2021年3月25日 国際親善試合(@日産スタジアム/観衆8,356人)日本 3-0 韓国
得点:(日)山根視来、鎌田大地、遠藤航

画像: ■2021年3月25日 国際親善試合(@日産スタジアム/観衆8,356人)日本 3-0 韓国 得点:(日)山根視来、鎌田大地、遠藤航

サッカーは社会貢献できるというメッセージ

 アグレッシブ。躍動感。連係連動。これらは指揮官、森保一監督が代表の目指すサッカーを説明する際に、よく口にする言葉だ。就任以来繰り返してきたこの言葉を、この日、日本の選手たちはピッチで存分に表現した。

 相手の韓国はコンディション面の問題を抱え、ソン・フンミンの不在など「ベストメンバー」ではなかったかもしれない。だが、前半の日本の戦いぶりは圧倒的だった。まず守備面の安定感が際立った。前から相手をハメて、簡単にはボールを出させない。仕方ないとばかりにロングボールを蹴らせては跳ね返し、セカンドボールもことごとく回収していく。守備から攻撃に転じた際のパワーのかけ方も見事で、相手ゴールに向かって最良の選択を繰り返した。

 16分、最初のゴールが生まれる。裏を狙う山根に守田が入れた縦パスは相手DFに引っかかったが、跳ね返りに大迫が反応。バックヒールのような形で再度裏へとボールを送ると、攻め残っていた右サイドバックの山根が受けて鋭く右足を振り抜き、GKの頭上を破った。守田と山根の元フロンターレコンビの連係を大迫がフォローする形で先制ゴールが決まった。

 2点目は27分だった。カウンターから前線で大迫がボールを収め、相手守備者を3人引き付けて、フォローに来た鎌田に落とす。前向きにボールを受けた鎌田はそのままの勢いでボックスに進入。眼前のDFが足を出す瞬間を見計らって股の間を通し、左のポストの内側へシュートを突き刺した。

 前半のうちに2-0とした日本は後半の立ち上がり、選手交代で圧力をかけて来た韓国にやや押し込まれるが、組織立った守備ですぐさまペースを握り返してみせる。その後は、江坂や小川ら初選出の選手たちをピッチに送り込みつつ、3点目を狙っていった。

 南野、江坂、浅野、古橋がゴールを狙うもネットを揺らせなかった中、83分にセットプレーからスコアを動かした。左CKの場面。江坂のキックを遠藤がプッシュ。後半から登場していた相手GKキム・スンギュを破った。

 その後、脇坂、川辺を投入し、さらに代表初選出の選手たちをデビューさせた日本はそのままゲームをクローズさせることに成功。10年前の親善試合と同様に、3-0の勝利を飾った。

 森保監督は協会スタッフに、そのときある選択肢の中で一番強い相手と対戦したいと常々リクエストしているという。それが、今回は韓国だった。どんなときも隣国のライバルとの対戦は激しく熱いものになるが、その観点から言えば、今回は相手の強度やテンションがこれまでの日韓戦で感じてきたレベルになかった。「韓国には世界的にもトップトップの選手がいますが、きょうはいなかった。次また対戦する機会があれば、違うチームだと思って対戦しないといけないなという思いはあります」と指揮官も話している。とはいえ、収穫が多かったことも確かだ。

「2011年以来、またこうやって日本で韓国と試合をさせてもらって勝てたいうことはすごくうれしいと思います。ただし、2011年とはチームが変わっていますし、今回、選手たちが、スタッフも含めて、困難な準備を強いられる中、日本の国民の皆さんに勝利を届けようと、笑顔になってもらおうと、最高の準備をしてくれて、試合で一丸となって、ハードワークして勝てたことが、何よりうれしいです」

「選手たちがアグレッシブに勇敢に球際のところで戦うということ、良い守備から良い攻撃につなげていこうということにトライしてくれたことがいい攻撃につながったと思います。攻撃を仕掛けるにあたって、単発で終わるのではなく、ボール保持者に対して多くの選手が勇気を持ってミスを怖れずにボールに関わる、チャンスを作ってゴールに向かってプレーをしようという気持ちがいい攻撃の形になったと思います」

「去年の10月、11月と強豪相手にヨーロッパでレベルの高い試合をさせてもらって、世界で勝つための基準を持ちながらアジアでも戦っていこう、高い基準を実践しようということが、きょうの試合にも生きた」

「(複数の形が想定された韓国の攻撃について)ピッチ内の選手でコミュニケーションを取って、修正しながら戦ってほしいと。それを選手たちが自然とやってくれました。スカウティングの情報は渡していますが、選手がお互いに話し合ってコミュニケーションを取って、プレーをしてくれたと思います。選手たちの力です」

 コロナ禍でさまざまな困難を乗り越え、開催に賛否両論あった中で実現した日韓戦は、日本の完勝に終わった。森保監督が試合後に振り返った通り、アグレッシブさ、高い基準の実践、ピッチ内の対応力という面で手応えをつかむことはできた。そしてーー。

「サッカーが社会の役に立つということ、社会貢献できるということを認識してもらえるとうれしいと思っていました。この困難の中で、サッカーをさせてもらいました。選手の頑張りを見ていただいて、勝利を喜んでもらうことで、見てよかったなと思ってもらえるように、少しでも苦しさを忘れていただく、笑顔になっていただく、色んな感情が動かされる気持ちになっていただければ、うれしいと思っていました」

 指揮官と選手たちはこの日、こんな思いを持って試合に臨んでいた。ライバルとの強化試合であり、メッセージを発信する一戦でもある。それが、今回の日韓戦だった。

取材◎佐藤 景 写真◎小山真司


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