2度のワールドカップを経験し、長くヨーロッパで戦ってきた吉田麻也だからこそ、日本とメキシコの間にある差を誰よりも理解したのかもしれない。収穫もあったが、浮き彫りになった課題も多かった。キャプテンが感じた日本の現在とは?

上写真=戦前から吉田はメキシコ戦が日本の指標になると語っていた(写真◎JFA)

■2020年11月17日 国際親善試合(リモートマッチ/@オーストリア:スタディオン・グラーツ・リーベナウ)
日本 0-2 メキシコ
 得点:(メ)ラウル・ヒメネス、イルビング・ロサノ

全員が自覚しないといけない

 フラッシュインタビューで口にした言葉が印象的だった。

「同じベスト16、ワールドカップへ出場しても、これだけ差があるんだと。全員が自覚しないといけない」

 前半は日本も決定機を生み出したが、後半は一転、メキシコにペースを握られた。結果、2ゴールを許して0-2で敗戦。吉田がピッチ上で感じた差の中身とは、どういうものなのか。

「各選手、ボール回しに非常に秀でていると思います。とくに後半、点を取ったあとは、なかなかボールを奪うことができなかったですし、向こうは点を取ったあとのゲームマネジメントが非常に、レベルが高かったと思います。ただ前半は自分たちにも十分にチャンスはあったと思うし、(相手が)中2日の影響もあって、重さもあったのかなというのも多少はあったんですが、自分たちの流れのときに決め切るかどうか、というのは当たり前ですけど、課題になったんじゃないかなと。
 ほとんどチャンスを作らせない中で、ワンチャンスをモノにされてしまった。おそらく、あとワンプレーやっていたらヒメネスは交代していたんじゃないかと思う。ベンチの選手もタッチライン際でスタンバイしていたので。あそこでもうワンプレーを粘らなければいけなかった。個人的にもチームとしても、悔しい」

 小さいようで、そこには大きな差があった。それを痛感したからこそ、「ベスト16でも違いがある」と吉田は言ったのだろう。

「シンプルなミスが増えれば増えるだけ、勝つ確率は下がる。きょうは全体的に小さなミスが多かったと思います。前半からそこの流れを断ち切ってしまうプレーが多々ありました。1つつながれば、1つ相手のプレスをかいくぐれば、もう1メートル前にボールが出ていれば、というシーンが非常に多かったなと。こういうレベルの相手に対して、これだけミスが出たら試合を難しくしてしまうのは当たり前。本大会ではポッド2に入る可能性が高いチームだと思いますが、確実にポット2に勝って、ポット1に対してどれだけ戦えるかがカギになってくると思う。やはりこういうところに勝たなければいけないですが、そこに勝つ力はまだまだ自分たちにはないなと思いました」

 日本の現在地を知る戦いと位置づけたメキシコ戦で、ポット2に勝つ力はないという現実を突きつけられた。ロシア・ワールドカップから2年を経て、いま日本が立っているのは、まだまだ世界のトップに伍していける場所ではなかった。

 いま立っている場所から、望む場所までの距離はどれくらいなのか。カタール・ワールドカップまでの2年という月日で、到達できるのか。

「前半には僕らにチャンスも十分にあって、ただ、後半の最初がやっぱり本当のメキシコのレベルだと思いますね。かなり押し込まれました。ワールドカップを見てもらえれば分かる通り、押し込まれる苦しい時間は長くなることもあるので、そこを踏ん張って、ショートカウンターだったり、相手のプレッシャーをかいくぐることだったりというのは、まさに後半、メキシコが僕らにやったことだった。2点目にしても、リードしてからのプレッシャーをかいくぐることにしても、まさに僕らがやりたいことをやっていた」

 一つの手本を示された格好。まねて学ぶのはもちろん、成長に欠かせない方法だろう。ただそれは、越えることを前提としてこそ、意味がある。日本が目指しているのは、メキシコもなかなか到達できないベスト8入りなのだ。

 2020年最後の代表戦で、現実を知った。この一戦の価値は、ここから日本がどう歩むかによって決まるーー。


This article is a sponsored article by
''.