なでしこジャパン(日本女子代表)は11日、パナマ女子代表と国立競技場で対戦した。パラグアイ女子代表戦から中2日で臨んだ試合は、菅澤優衣香のハットトリックなど前回の試合と同じゴールラッシュで7-0と快勝。相手との力の差がある中で自チームの課題にフォーカスし、ゴールを意識したプレーで勝利を手にした。

上写真=パナマ戦で先発した長谷川唯。チームの3点目をスコアした(写真◎小山真司)

■2021年4月8日 国際親善試合(@国立競技場/観衆4,036人)
日本女子 7-0 パナマ女子
得点:(日)菅澤優衣香、清水梨紗、長谷川唯、菅澤優衣香、籾木 結花、菅澤優衣香、杉田妃和

・日本女子代表メンバー:GK山下杏也加、DF清水梨紗、宝田沙織、高橋はな(70分:三宅史織)、北村菜々美(79分:浜田遥)、MF籾木結花(59分:宮川麻都)、林穂之香(79分:田中美南)、中島依美、長谷川唯、FW岩渕真奈(59分:杉田妃和)、菅澤優衣香(61分:木下桃香)

・パナマ女子代表メンバー:GKジェニス・ベイリー、DFキャサリ・カスティジョ、イラリー・ハエン、ジョミラ・ピンソン、ロサリオ・バルガス(90+5分:エリディア・ゴンサレス)、MFジャニサ・バティスタ(46分:ジェレニス・デレオン)、マリア・ゲバラ(65分:エリカ・エルナンデス)、アルドリス・キンテロ(46分:シアンドラ・ゴンサレス)、ナタリア・ミルズ(65分:ディアナ・ポン)、FWリネス・セデニョ(77分:スージー・カッシノバ)、マルタ・コックス

先発を5人入れ替え臨む

パラグアイ戦に引き続き、今回も力の差のある相手との試合になった。その中で問われるのは今回も、チームが何にトライし、何を得たのかということになる。一つは五輪本番と同じ中2日の試合で、選手のコンディションはどうなのか、という点だ。前回の試合と先発を5人入れ替えて臨んだ。

 本番でも十分に想定される変更だったが、結果から言えば、コンディション面にさほど問題は感じられなかった。連続出場となった右サイドバックの清水は攻撃参加とプレスバックをしっかりこなし、裏に飛び出して2点目のゴールもスコア(自身、代表初得点)。ボランチの中島も攻守に幅広く動き、チームを機能させた。

 もちろん、日本が圧倒的にボールを持てる状況だったこともあり、消耗度がそれほど大きくなかった面はある。それでも、本大会に向けて、いいテストになったことは確かだった。高倉麻子監督も試合後に「ゴールへ向かう意識というのもみんな強く持ってくれた。自分たちがボールを保持する時間も長くて、相手が少し引き気味になった状態で難しくはありましたが、サイドからや、ミドルシュートを打っていこうと少し変化をつけて、良いゴールが生まれたと思います」と話し、手応えを感じていた。

 結局試合は前半に5得点、後半に2得点を記録して前回のパラグアイ戦と同様のスコア、7-0で決着した。本大会で決勝戦が行なわれる国立競技場での勝利の高倉監督は「またここに戻ってきたい」と話した。

 この試合では前回ベンチスタートだった選手、そしてこの試合前に合流した選手たちが結果を出している。所属するミランの事情から合流が遅れた長谷川は左サイドハーフの役割に留まらず、あらゆる場所で顔を出し、攻撃に関与。チームの3点目も記録した。ボランチを務めた林は的確な位置取りでボールを引き出し、素早いターンからシンプルなパス出しで攻撃を加速させた。

 右サイドハーフでプレーした籾木はさすがのキープ力と技術を披露。ゲームの流れを見ながら持つのか、パスを出すのか、メリハリを利かせつつ、同サイドのサイドバックである清水の攻撃参加を促した。前半終了間際に自らチームの5点目もマークしている。そしてCBでプレーした高橋は守備機会そのものが少なかった試合の中でも、安定した守りを披露した。GK山下も被シュート2本と参考材料は乏しいが、最後尾からコーチングし続け、味方を鼓舞してみせた。

メンバー絞り込みのポイント

「今回、前回と先発で使った選手に関しては、そのポジションで期待しているということはもちろんです。ただメンバーはコンディションも含めて考えての先発。もちろん経験を積ませたいというところもあります。途中から入った選手に関しても、どの選手もコンディションが上がってくれば、また違ったようなイメージも出てくると思います」

 高倉監督は選手の起用理由を問われ、こう答えている。ベースとなる選手の確認と、競争意識を刺激することでチーム力のアップに努めたということなのだろう。さらに今後のメンバー絞り込みについては聞かれると、その時点で力のある選手を選ぶといスタンスは変えないとしながらも、『アンダー世代の世界大会で結果を残してきた選手たちの成長』について言及した。今回の2試合にともに先発したCBで起用された宝田、前回が右サイドハーフ、今回は左サイドバックでスタートした北村はまさに2018年のU-20女子W杯の優勝メンバー。他にも前回先発したCB南萌華、パナマ戦で先発のCB高橋、ボランチの林、2試合で途中出場した宮川麻都らもまた同大会のメンバーだった。3月中旬からの合宿、今回の2試合で若い選手たちの台頭を改めて確認したということだろう。

「サッカーに対する理解も高いですし、何をやるべきかを分かりながら今、チームの力を上げていると思います。ようやくクオリティーを見ながら、ピックアップできる選手たちが集まってきた」と高倉監督。18人枠を争う競争が若手の成長によって激化している状況を歓迎した。

 指揮官の頭の中では当然ながら、これまでの積み重ねによってある程度のベースは出来上がっていると思われる。ただ、今回の活動は選ぶ側にとっても実り多いものになったのは事実。五輪まであと100日あまり。なでしこジャパンは層の拡充を終え、いよいよ本大会で輝くメダルを取るために、ここからチームの深化を図っていく。6月に再び集まってテストマッチ2試合を戦い(10日、13日)、大会直前の7月14日に最後の調整試合を戦って大会に臨む。

取材◎佐藤 景 写真◎小山真司


This article is a sponsored article by
''.