ヴィッセル神戸に移籍後初出場となったGK廣永遼太郎。アカデミーで育ち、プロの第一歩も踏み出した、育てのFC東京を相手に戦った。当時は試合出場はかなわず、これが「味スタデビュー」。特別な思いでピッチに立っていた。

上写真=廣永遼太郎は試合後にFC東京のサポーターにあいさつ、温かい拍手を受けた(写真◎J.LEAGUE)

■2021年3月28日 JリーグYBCルヴァンカップ第2節(@味スタ/観衆:6,512人)
FC東京 2-0 神戸
得点:(F)ディエゴ・オリヴェイラ、三田啓貴

「温かい拍手で迎えてくれました」

 ヴィッセル神戸のGK廣永遼太郎は、特別な思いでこの日のFC東京戦に臨んでいた。移籍してきて初めての出場、サンフレッチェ広島時代の2017年以来の公式戦のピッチ、そして何より、アカデミー時代から育ったFC東京のホーム、味の素スタジアムでのゲームだったからだ。

「僕は東京で育てられましたけど、試合に出て東京に貢献するということができませんでした。だから、他のチームの選手としてでも味スタに凱旋して、元気な姿を見せることができればと思っていました」

 試合前には森重真人に「頑張れよ」と声をかけてもらったという。

「何とか元気な姿を見せることができてよかったと思いますけど、チームとしては残念な結果なので、複雑な気持ちですね」

 立ち上がりの11分と14分に失点して、そのまま0-2で敗れる結果になった。「久々の公式戦ということでも試合感覚のなさは感じませんでした」と不安はなく、「個人としてもいい準備もできて」ピッチに入ったのだが、「立ち上がりのチームの判断、入り方がよくありませんでした」と悔やんだ。

 11分の失点はミドルパス一発で裏を取られ、廣永も飛び出して防ごうとしたものの、ディエゴ・オリヴェイラにかわされて流し込まれた。14分には廣永からのビルドアップの流れからプレスにはめられて、パスミスを三田啓貴に拾われてそのまま左足で決められてしまった。

「相手のプレッシャーは想定内で、練習でも練習試合でも普段からはがすことはやって来たので、僕のパスがもう少しうまく出せていれば(プレスを抜け出して)逆に神戸のチャンスになったのかなと思います」

 実際にパスミスした選手をかばうように、自分の最初のパスの精度が低いことを猛省した。失点に絡むのはGKの宿命とはいえ、悔しさが募る「味スタデビュー」になってしまった。それでも、試合後にはFC東京のサポーターにあいさつ。

「結構帰られていたので、行こうかどうか迷ったんですけど、温かい拍手で迎えてくれました。改めて凱旋できてよかったと思いました」

 前川黛也が日本代表で不在の間に巡ってきたチャンスで、貴重な経験を積むことになった。FC東京の思い出に新たな1ページを刻み込んで、次の出場のチャンスに向けてまたしっかりと準備に励むだけだ。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


This article is a sponsored article by
''.