関東大学1部リーグで、大きな存在感を示している守護神がいる。J3の福島ユナイテッドに加入内定が発表された早稲田大の上川琢は昨季は正GKの座を奪われたが、精神面で成長。今季はケガも乗り越え、さらなる飛躍を遂げようとしている。

上写真=福島ユナイテッドFC加入が内定している早稲田大の上川琢(写真◎関東大学サッカー連盟/飯嶋玲子)

試練を乗り越えて強くなった

 公称の180センチよりも少しばかり小さく見えるが、体格を補って余りある能力を備えている。ハイボールにも果敢に飛び出し、目いっぱい腕を伸ばしてキャッチ。一歩先を読むセービングは持ち味の一つだ。早稲田大の上川は胸を張る。

「ポジショニングには、こだわっています。この上背だからこそ、考えないといけない。予測を生かし、ハイボールにも対応しています。高身長ではないGKでも活躍できるところを発信していきたい」

 上川は湘南ベルマーレの下部組織で育ち、2018年に早稲田大に入学。2年生の途中からポジションをつかみ、2019年シーズンはチームが苦境に追い込まれるなか、奇跡の1部残留に大きく貢献した。ビッグセーブを連発し、一気に評価を高めた。足元の技術に優れ、相手守備陣の裏を突くキック精度の高さも本物。本人は攻撃的なGKとしての自負を持っている。

「最終ラインの裏をカバーし、ビルドアップにも参加できます。僕はフィールド選手の負担を減らすことができると思っています。コーチングを含めて、チームをより前向きにできるのが特徴です」

 順風満帆のキャリアを歩んでいくかと思いきや、3年時は控えGKとして過ごした。守護神としてゴールマウスを守る先輩の山田晃士(現ザスパクサツ群馬)からは学ぶことばかりだった。

「一つひとつの取り組みに懸ける思い、ピッチ外での選手やスタッフとの関わり方、練習に打ち込む姿勢など、感化された部分は多いです」

 一度つかんだ正GKの座を奪われても、不貞腐れるようなことはなかった。今年9月、群馬公式YouTubeチャンネル『山田晃士魂の鼓舞』で話題になった熱血漢の影響は計り知れないという。

 そして、最終学年を迎えた今季はシーズン開幕前から「自分がもっとやってやる」と意気込んでいた。だが、まさかの負傷離脱。一難去ってまた一難である。第五中足骨を疲労骨折し、全治約4カ月の診断を下された。それでも下を向くことはなく、地道にリハビリをこなした。学生トレーナーとともにコンディションを整え、9月20日のリーグ戦でようやく復帰。J3の福島ユナイテッドからの内定も発表され、さらに気を引き締めていた。

「注目されるなかでも、チームを勝たせるプレーをしないといけないと思っています」

 力強い言葉には、覚悟がにじんでいた。早稲田大の外池大亮監督も、精神的な成長を感じ取っている。

「昨季は山田の陰に隠れていましたが、今季は先輩から引き継いだものを最上級生として見せてくれています。4年生としての強い気概を感じますし、パフォーマンスも安定しています」

 試練を乗り越えてきた人は強い。早稲田のゴールマウスを守る男のたくましさは増すばかりだ。

取材◎杉園昌之


This article is a sponsored article by
''.