J1昇格を決めたアルビレックス新潟で選手たちの中心になったのは、キャプテンの堀米悠斗だ。今季、就任した松橋力蔵監督を選手の立場で支えながら、強くしなやかに成長していくチームをまとめ上げた。昇格決定の瞬間に突っ伏したキャプテンがいま、幸せな理由。

上写真=堀米悠斗はキャプテンとしての重責を果たして歓喜のときを迎えた(写真◎J.LEAGUE)

■2022年10月8日 J2リーグ第40節(デンカS/32,979人)
新潟 3-0 仙台
得点者:(新)伊藤涼太郎2、アレクサンドレ・ゲデス

「最後までついていきます」

 堀米悠斗は、J1昇格決定を告げる心地の良いホイッスルの音を聞くと、膝から崩れ落ちて地面に突っ伏した。

 だが、すぐにみんなの喜びの輪に加わった。

「千葉ちゃんが引っ張って、しんみりするよりはワーワーやっていて、参加しなければいけないなと思いました」と笑わせたが、本音は別。

「もっと浸りたかったですけど、それをするなら最後だなと。最後まで戦って、優勝して勝ち取ったときに、自分のペースで喜びたいなと思います」

 キャプテンがピッチに立ったのは74分から。ベンチスタートだったのは体調を崩して週の最初のトレーニングをこなせなかったからだったといい、それを猛省したのだが、ピッチに入ればさすがの存在感だ。3分後には伊藤涼太郎の追加点が生まれ、リードを広げても強気な姿勢を崩さずにどんどんボールを受けて仙台にリズムをつかませず、試合は結局、90+4分にアレクサンドレ・ゲデスのダメ押しゴールが決まって3-0の完勝だった。

「アディショナルタイムが表示されてから、すごく短く感じました。リードしたら相手にボールを持たれるというのはよくある展開ですけど、こっちがしっかり握ってクローズさせる、スキがあれば点をさらに取る、というのがアルベルト(前)監督から要求され続けてきたことでした。それをここで発揮できたことがすごくうれしかったし、みんながボールを簡単に放棄しなかったその姿勢が成長かなと思いますね」

 このチームが過去をしっかりと未来につなげてきた、揺るぎない証拠である。

 そのことは、試合の始まりからすでに明らかだった。引き分けでもJ1昇格が決まるという大一番で、動きがぎこちなくなってもおかしくはなかったが、立ち上がりからまったくそんなことはなかった。

「仙台さんがかなり引いて守ってきたのもあって、ボール保持自体はそこまで難しくないゲームでした」という幸運もある。ボールを持ってリズムを作る自分たちに、ボールを持たせてもらえるのだから。それに、1週間前の苦い記憶が生々しく残っていた。

「山形戦で硬いというか、うまくいかない前半を過ごしてしまったので、改善して臨もうと思ったゲームでこういうプレーができました。しっかりと前節での反省を生かしたゲーム運びができたと思います」

 前の試合から切り替えて目の前の1試合に集中する、というのは、口にするのは易しいが、実行するとなるとまた別の話。それを毎試合、愚直にやり続けてきた結果が、昇格という果実になった。

 松橋力蔵監督は、昇格を決め、場内を一蹴し、Nスタンドのサポーターをバックに記念撮影を終えると、記者会見で「私はもう切り替えています」と言った。昇格決定から1時間もしないうちに、である。

「その姿勢がこのチームに浸透していると思うので、最後までついていきます」

 堀米は指揮官への絶対的な信頼をそう表現した。そして改めて、昇格を成し遂げたシーズンを思う。

「サッカー選手としていま、幸せだなと思います」

 そうやってしみじみと語りだしたのは、自分がうれしいから、だけではなかった。

「新潟県民の皆様に感動を与えられるような、生活の喜びとなるような結果が得られて」というのが理由だった。自分のためではなく、周りのみんなのために。

 堀米悠斗がキャプテンである理由である。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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