6月26日の明治安田生命J2リーグ第23節で、横浜FCがアルビレックス新潟を破ってついに首位に返り咲いた。2-0という快勝だったが、4バックで新潟に対抗し、前線から組織的に守った戦いが功を奏した。でも四方田修平監督は「喜びすぎないように」と冷静だ。

上写真=先制ゴールの小川航基に、アシストした長谷川竜也が抱きつく。連係がぴたり(写真◎J.LEAGUE)

■2022年6月26日 J2リーグ第23節(ニッパツ/9,100人)
横浜FC 2-0 新潟
得点者:(横)小川航基、渡邉千真

「出した時点でゴールのイメージが」

「我慢強さについては試合前に言われていたし、前回は新潟に3点やられているので、みんなのやられないぞという意識が見えました」

 横浜FCのキャプテン、長谷川竜也は、前回5月21日の第17節でアルビレックス新潟に喫した0-3の完敗からのリベンジ成功を静かに振り返った。小川航基と渡邉千真という2トップがゴールを奪い、最後まで集中力を張り詰めて失点はゼロ。決める人が決めてみんなで守る好循環だ。

 同じ鉄は踏まない、という思いは、チームを鼓舞するメンタルの話だけではなくて、戦い方そのものにも影響を与えていた。守備で5バックになるパターンがベースだが、この日は4-4-2できれいにブロックを組んだ。

「細かいことは言えませんが」と四方田修平監督は説明するから、手応えがあったということ。

「5枚で守るのも4枚で守るのも、それぞれメリットもデメリットもあると思います。ただ、新潟さんと前回戦った前半ではまったくはめることができなかったので、今日はシンプルに4-4-2でバランスよく守った上で、奪って攻めにいくことを選択しました」

 新潟は4-2-3-1だから、立ち位置でギャップを生んで攻め抜くつもりが通用しなかった、というのが、前回の対戦。だから今回は逆に、同じ4バックで対抗した。スピードとパワーにあふれるFWサウロ・ミネイロが出場停止だったことも関係している。この日の2トップは小川と渡邉で、連動しながら組織的にパスコースを限定する役割に忠実だった。新潟の攻撃のリズムを作るのが、センターバックとボランチの四角形。ここをどう制御するかが守備のスタートになる。

「ボランチが出るのかフォワードが見るのか、そこはバランスですけど、声をかけ合いながら、前が日本人だったのでコミュニケーションを取りながらできてよかった」

 左サイドハーフの長谷川は、頼もしく見ていた。こちらのボランチはハイネルと和田拓也。ハイネルの恐れを知らない守備力が盾になったし、和田も球際の強さと配球力を兼ね備える。局地的に、四角形に四角形で対抗する守備になった。

 攻撃では「回数が少なかった」と四方田監督も長谷川も声を揃えたが、2トップの個性を生かすことに集中していた。長谷川がピッチの上での感触を明かす。

「千真さんも航基も足元で収められるので、まずは収めてから攻撃を展開するのが良かったと思います。守備で押し込まれすぎて、特に前半は前に行く機会が多くなくて苦しい展開になりましたけど」

 サウロ・ミネイロがいれば、圧倒的な速さを活用してDFラインの背後に走ってもらえば相手を押し込める。小川と渡邉のセットなら、足元を経由して揺さぶればいい。19分の先制ゴールがまさにそうで、右でイサカ・ゼインがもらうと、その内側で渡邉がサポートし、さらに左の小川に横パス、それを左外の長谷川に振って押し込んだ。カットインからのクロスを、小川が相手の背中側からもぐり込む技ありの動き出しからヘッドで送り込んだ。

「僕が竜也くんにはたいたんですけど、あの時点で前を向いて自分で勝負することも考えました。でも、あそこで出した時点でゴールのイメージができました。竜也くんがフリーで持って右に持ち替えて来るなと。最初に簡単にシンプルにはたいたことでイメージできたんです」

 小川はボールを受けた瞬間に、揺さぶり続けた判断が確かだったことを実感した。長谷川のカットインからのインスイングのクロス。小川の一瞬でマークを外してフリーになる動き出し。お互いの個性がきれいにかみ合ったゴールになった。

 これで、ベガルタ仙台、新潟と上位チームを連破して、首位に立った。でもまだ、先は長い。

「僕たちは3位だったので、後半戦の最初の2試合が2位(仙台)と1位(新潟)のチームと立て続けにくるとは思ってもいませんでした。そうなった以上、直接対決を決勝戦のような気持ちでぶつかっていくしかないと思っていました」

「ただ、(この連戦を)終わってみたら、まだ19試合、合計57ポイントを取り切れるというところでは、まだまだ分からないと思っています。あまり喜び過ぎずに切り替えて、また地道に1週間を全力でぶつかっていくことに立ち返っていきたい」

 四方田監督はやはり冷静。選手やフォーメーションが変わっても、この心の置きどころだけは変えるつもりはない。

 取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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