2021年11月28日、明治安田生命J2リーグ第41節が開催された。フクダ電子アリーナでは11戦負けなしのジェフユナイテッド千葉と引き分け以上の結果でJ1昇格が決まる京都サンガF.C.が対戦。「最初からアグレッシブさを出したい」と話していた京都は、千葉のソリッドな守備の前に苦しむも最後までハードに、そして攻めの姿勢を維持して戦い抜き、ドローで勝ち点1を積んで12年ぶりの昇格を成し遂げた。

上写真=京都の選手とスタッフは試合後、アウェーに駆けつけたサポーターとともに記念撮影を行なった(写真◎J.LEAGUE)

■2021年11月28日 明治安田生命J2リーグ第41節(@フクアリ/観衆6,732人)
千葉 0-0 京都

・千葉メンバー:GK新井章太、DF新井一耀、チャン・ミンギュ、鈴木大輔、MF福満隆貴(65分:安田理大)、小林裕介、田口泰士(46分:高橋壱晟)、末吉塁(65分:小田逸稀)、船山貴之(65分:サウダーニャ)、見木友哉、FW櫻川ソロモン

・京都メンバー:GK清水圭介、DF白井康介、ヨルディ・バイス(16分:長井一真)、麻田将吾、荻原拓也(90分:黒木恭平)、MF福岡慎平(77分:三沢直人)、川崎颯太、武田将平、FW宮吉拓実(87分:庄司悦大)、ピーター・ウタカ、松田天馬

歴史は背負えないけど、創ることはできる

 前節の岡山戦、J1昇格がかかっていたこともあり、京都の選手たちのプレーには試合開始直後から硬さが見られた。慎重な選択とプレーが多くなり、その結果、ゴールチャンスをなかなか生み出せなかった。時間の経過とともに本来のアグレッシブさが見られるようになったものの、相手を凌駕するまでには至らず。スコアレスドローで試合を終えることになった。千葉戦に臨むにあたってチョウ・キジェ監督は「昇格のかかるゲーム」「アウェー」「好調な相手との対戦」を経験できたことは大きいと語り、岡山戦の反省を生かしてスタートから積極的に戦うと話していた。

 実際、千葉戦では球際の争いも前へ向かう姿勢も前節の序盤よりは積極性を出せていた。ただ、相手の守備が堅く、素早く組み上げられる5-4-1の守備ブロックに手を焼く。敵陣でうまくボールをつなぐことができない時間が続き、散発的にゴールに迫るものの、連動性をピッチで示すことができなかった。16分にはここまで全試合フル出場中だったCBヨルディ・バイスが負傷により交代。京都にとっては難しい前半になった。

 0-0で前半を終え、迎えた後半もしばらくは同じような展開が続く。素早い囲い込みでボールを奪う京都だったが、帰陣が早い千葉の守備網をなかなか突破できない。74分には宮吉からのロングフィードを収めたウタカがボックス内から狙ったものの、千葉のGK新井の好守に阻まれる。対する千葉も75分にボックス右から狙ったサウダーニャの左足シュートがクロスバーを直撃。さらに79分には左CKから櫻川がヘッドでゴールを強襲し、京都にとってはGK清水の好セーブがなければ、というシーンだった。

 残り10分を切り、オープンな展開が増え始めると、1点を目指してさらに攻め合う展開になっていく。88分には右サイドからカットインした白井がシュート。千葉守備陣は完全に後手を踏む形になったが、今度は千葉の守護神・新井がストップしてネットを揺れなかった。引き分けでも昇格が決まる京都はしかし、最後まで積極的な姿勢を示した。7分のアディショナルタイムも前のめりに戦い抜き、ついに試合終了の笛が鳴った。0-0。スコアを動かすことはできなかったが、1年間、京都が積み重ねてきたものをピッチで表現した。そしてつかんだクラブとして12年ぶりのJ1復帰ーー。

「僕の生まれた街に帰ってきて、12年という月日は外からしか見ていなかったですけど、昔、都のあった京都の歴史は重いなと見ていましたし、12年の歴史を背負えないけど、今日から歴史を創りたいと思う一戦で、本当にきょうはシュートは入らなかったですけど、ハードワークと京都らしさを見せてくれた。これからもっとこのチームに強くなってもらいたい。最初は今年、昇格できたらうれしいと思っていましたけど、この街に帰ってきて、みんなと昇格できて、想像以上の喜びです」

 今季から就任したチョウ・キジェ監督はそう言って昇格の喜びを噛みしめた。絶え間ないハードワークと素早い攻守の切り替えはあくまでベース。その上で相手のどこにスキがあり、どこにどうやってボールを動かしていくか。鍛え抜かれたチームは、前のめりに戦って、昇格という結果をつかみ取った。

「本当に1月16日に、僕の誕生日から練習したんですけど、新しい戦術とか、新しいやり方に対して、色々と選手も思ったところはあると思います。ただそれを真摯に受け止めて、今日いた選手も来れなかった選手も、全員で自分たちの方向に向かってやっていこうということが今日の結果に出たと思います。まだまだ足りないところはあると思うので、最後の1試合も含めてしっかりやりたいと思います」

 指揮官は千葉戦について「今年の中でもベストゲームかなと思える気迫が出た」と振り返った。ただ、ここがスタートラインになることも強調した。「歴史は背負えない。でも創ることはできる」。京都は2010年以来のJ1復帰でようやく歴史を動かした。そしてここから、新しい歴史を創っていく。


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