7月17日の明治安田生命J2リーグで2位京都サンガF.C.と3位アルビレックス新潟が激突。先制したのは京都で、荻原拓也が左足を振り抜く一撃だった。これがリーグ戦初ゴールで、奪った相手は古巣の新潟と、印象に残るゴールになった。しかし、その味は複雑なようで…。

上写真=荻原拓也がリーグ戦初ゴール! 理想的な展開から自慢の左足を振り抜いた豪快な一発だった(写真◎J.LEAGUE)

■2021年7月17日 明治安田生命J2リーグ第23節(@サンガS/観衆7,949人)
京都 1-1 新潟
得点者:(京)荻原拓也
    (新)高木善朗

「攻め続けた結果がゴールをやっと生むことに」

 荻原拓也が、古巣のアルビレックス新潟から奪ったリーグ戦初ゴールは、ちょっと複雑な味だったという。

 ゴールに至る流れは完璧だった。34分、新潟がFKを最終ラインからつないでくると、まず宮吉拓実がボールホルダーの千葉和彦に規制をかけ、そこから周りの選手が呼応するようにパスコースをつぶしていく。前線に蹴らせると、ヨルディ・バイスがそのボールを読んで前へ。相手に渡るがそのクリアがこぼれると飯田貴敬がすかさず拾って武田将平へ。この瞬間に2歩、後ろに下がってフリーになったピーター・ウタカが縦パスを引き出してワンタッチで左へ展開、オープンスペースに走り込んでいた荻原が左足を思い切り振って、ゴール右に突き刺してみせた。

 相手の強みであるボール回しをプレスで奪ってからすかさず前に向かい、逆サイドに展開してサイドバックの選手が突き刺してみせる。京都が表現しようと積み上げてきた前へ前へのスタイルを象徴する一撃だった。

 しかし、75分にはついに同点ゴールを浴びてしまう。2位京都と3位新潟の激突は結局、1-1のドローに終わった。

「(初ゴールの)うれしさももちろんありますけど、試合の結果がついてこなかったのが悔しいです。いい選手の条件はチームの勝利に貢献できるかどうかだと思うので、勝てなかったら意味ないじゃないですけど勝ちを持ってきたいですよね。だから、複雑な気持ちですね、正直」

 手放しで喜べないのは、そんな理由からだった。ただ、2カ月前の悔しさを晴らすゴールになったのも確かだ。

 5月23日に新潟とアウェーで戦った第15節で、荻原は前半だけで交代させられてしまう。その前半終了直前に迎えた絶好機でゴールを奪うことができなかった。

「前回のアウェーでの新潟との試合は45分で交代して、個人的に悔しい思いがあって、あのときは普通にやれなかった自分がいました。だから今日はいつもどおりにやろうと意識して試合に入って、特別何かが良かったことはないけれど、攻め続けた結果がゴールをやっと生むことになりました」

 やはり、続けることは大切なのだ。

 だから、引き分けたことは残念だけれど、お互いに力を出し切ったことで清々しさのようなものも残った。

「前半はパーフェクトというか高いパフォーマンスをチーム全体で出せて、いい状態で前半を折り返した中で、後半は相手が負けているのでパワーを持って入ってきて、それを跳ね返せませんでした。あの時間帯に失点したのは悔しさもありますし勝ちたかったのもあるけど、お互いにクオリティーを持ったチームでいい試合ができたと思っています」

 それも、昨年期限付き移籍で成長の場になった古巣と、その成長を土台にしてレギュラーとして活躍する現在のチームとの対戦だったから、感慨も深い。試合後には新潟サポーターの集まるゴール裏にあいさつに行って、深々としたお辞儀に感謝の気持ちを込めた。

「本当にフェアに戦った結果だと思うし、激しいバトルのシーンもありましたけど、それはいい試合の象徴的な部分で、拮抗した緊張感のある試合でした」

 75分にピッチを退いて、「ベンチに帰ってからのほうがソワソワしました」と笑わせたが、荻原のキャリアにとっては大きな意味のあるゲームになったに違いない。

写真◎J.LEAGUE


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