11月8日、明治安田生命J2リーグ第32節が開催された。ヤマハスタジアムではジュビロ磐田と愛媛FCが対戦。新型コロナウイルスの影響で選手11人を欠く磐田が愛媛に先行を許す苦しい展開の中、終盤に追いつき、ドローで試合を終えた。

上写真=同点ゴールを決めた磐田の山本康裕(写真◎J.LEAGUE)

■2020年11月8日 J2リーグ第32節(観衆4,715人/@ヤマハ)
磐田 1-1 愛媛
得点:(磐)山本康裕
   (愛)吉田眞紀人

・磐田メンバー◎GK八田直樹、DF小川大貴、鈴木海音、藤田義明、櫻内渚、MF山本康裕、上原力也、遠藤保仁(86分:宮崎智彦)、大森晃太郎(77分:清田奈央弥)、FWルリーニャ(67分:吉長真優)、中野誠也
※SUB:GK杉本大地、三浦龍輝、DFフォルリン

・愛媛メンバー◎GK岡本昌弘、DF茂木力也、山﨑浩介、前野貴徳、MF小暮大器、田中裕人、川村拓夢、長沼洋一、FW吉田眞紀人(89分:三原秀真)、横谷繁(46分:山瀬功治)、有田光希(69分:丹羽詩温)
※SUB:GK加藤大智、DF西岡大志、MF忽那喬司、清川流石

切り替えてピッチに立ってくれた

 磐田のメンバーリストを見れば、新型コロナウイルスの影響は一目瞭然だった。小川航基、舩木翔、石田崚真の3人が陽性判定を受け、濃厚接触疑いの8名もメンバー外。11人が不在となる中でチームを編成することを余儀なくされていた。

 結果、控えも含めて前節から8人が入れ替わった。先発には今季ここまで出場1試合の鈴木海が名を連ね、控えにも出場1試合の清田、出場機会のなかった吉長が入っている。そのサブメンバーも7人を置くことができずに6人で編成。しかもそのうち2人がGK(杉本大地、三浦龍輝)。つまりはフィールドプレーヤーの数が足らなかった。そもそもこの試合も、開催が前日夜に正式決定されるという混乱の中で迎えていた。

 それでも、前半からボランチの遠藤を中心に磐田がボールを握り、ゲームを優位に進めていった。ポゼッションで愛媛を上回り、チャンスを次々に生み出していく。ルリーニャ、中野、山本がゴールをうかがい、試合開始から飲水タイムまでは、磐田がほぼ一方的に攻め立てた。その後も32分に大森、38分と前半のアディショナルタイムに中野が決定機をつかむ。磐田ペースであるのは誰の目にも明らかだった。

 迎えた後半も、早々の48分にルリーニャのクロスに中野が合わせてあわやのシーンを作りだす。ボールはクロスバーに当たったものの、前半の流れを磐田が継続しているように思われた。しかし、磐田が再三のチャンスに決め切れない一方で、愛媛は何度も訪れたピンチをしのぎ、守備のリズムをつかんでいた。反撃のタイミングを探り、52分に起死回生のゴールを手にする。長沼のスルーパスに反応した川村が左からクロスを送り、吉田がゴール前にタイミングよく走り込んでゴールをスコア。狙いとするパスワークとサイド攻撃によって、ほしかった先制点を奪ってみせた。

 その後は再び磐田がボールを保持して敵陣に攻め入り、愛媛はうまく守って反撃する展開になっていく。攻める磐田、しのぐ愛媛。その構図のまま時間が過ぎていった。互いに選手を交代させながらゲームを動かしにかかるが、大きな変化は生まれず。このまま決着かーーと、スタジアム全体が意識し始めた85分、突如としてピッチで放たれた1本のロングパスが状況を動かす。

 自陣のセンターサークル付近でボールを持った遠藤がロングパスを愛媛守備陣の背後に送る。そこへ中野が抜群のタイミングで走り込み、左足を一閃。シュートはクロスバーを直撃したが、その跳ね返りを清田が拾って、山本へ。山本はGKの位置を見て冷静に蹴り込み、ネットを揺らした。敵将の川井健太監督も「警戒していた」という遠藤のパスが出発点。磐田はそのパスから連動した攻撃を仕掛け、土壇場で何とか追いついた。

「(選手のやりくりは厳しかった?)サッカーをやっている以上はケガ人も出ますし、今は後ろにケガ人が多くて難しい部分もあったんですが、選手もそうですけど、やっぱりやる限りは勝たなければいけない。ある面では、選手も疲れていたと思いますが、前からボールを奪いにいって、攻撃しようと最後の最後までプレーしてくれたと思います」

「(動揺はあったか?)誰か(新型コロナに)かかっておかしくない部分がある。そこは、選手がしっかり切り替えて、ピッチに立ってくれたと思います」

 鈴木政一監督は一切の言い訳をせず、難しい状況の中で全力を尽くした選手たちを称えた。しかしながら、昇格を見据えれば、その可能性を少しでも広げるために絶対に勝利が必要なゲームだった。これで2位福岡との差は17ポイント。残りは10試合という状況を考えれば、昇格は極めて厳しい状況となった。

 混乱の中でタフに戦った姿勢は当然ながら称えるべきものだが、磐田にとっては悔しさの残る結果だ。同点ゴールをスコアした山本は、フラッシュインタビューに答えて「先に失点して難しい状況を作ってしまったので、何も残らないなという感じです。プロである以上どんな状況でも結果を出さなければいけないので、僕自身も含め、チームとしてまだまだ甘かった」と悔んだ。

 次戦、10位の磐田は中2日で4位につける新潟と対戦する。


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