ジュビロ磐田加入後、4試合目の出場となった東京ヴェルディ戦でも、遠藤保仁は圧倒的なスキルと優れた戦術眼を見せつけた。その存在は早くもチームの色を変えつつある。いったい何をもたらしているのか?

上写真=東京ヴェルディ戦と引き分け、遠藤は加入後、4試合負けなしとなった(写真◎Getty Images)

■2020年10月21日 J2リーグ第28節(観衆3,160人/@味の素)
東京V 0-0 磐田

一人ひとりの特徴が把握できてきた

 遠藤にとっては、磐田で4試合目のゲームだった。加入後に初めてピッチに立った10月10日の松本戦から中3日で長崎戦、さらに中3日で金沢戦を戦って、この東京V戦は中2日で迎えていた。史上最も多くJリーグの試合に出場している40歳は、ハードな日程も何のその。この日も先発し、いきなり魅せた。

 開始2分、ワンツーを成立させて小川大貴を右サイド深くまで進入させ、クロスを導いた。5分、相手最終ラインの裏へ絶妙な浮き球パスを送り込み、ルキアンのシュートを演出した。

 相手の陣形と出方を見ながら巧みにパスを配って攻撃を加速させ、セットプレーのキッカーとしても敵のゴールを脅かしていく。とくに立ち上がりは東京Vが4バックを採用した磐田のシステムに対応できず後手を踏んだため、遠藤は中盤を自由に動き、ボールをさばいた。東京Vのアンカー、藤田譲瑠チマも「システムが変わることを把握できていなかったので、遠藤選手が空いてしまって、そこからルキアン選手にボールが出された」と劣勢だったことを認めた。

 中盤でミスマッチが起きている状況を逃さず、縦パスを通して好機を生み出すのはさすがだった。そして目を見張ったのが、東京Vにゲームの流れが傾いていた時間帯の一つのプレーである。攻撃ではなく、守備だ。

 62分、磐田は中盤左サイドでボールを奪われると、一気に逆サイドの山下諒也に展開された。そこからさらに藤田につながれ、再び左サイドへのミドルパスを許す。ボックス内で待っていた小池純輝にダイレクトでゴール前へ折り返された。そこへ2列目から走り込んのは佐藤優平。しかし、先にボールに触ったのが遠藤だった。大きくクリアして、事なきを得た。

 左右に振られる劣勢の中で、遠藤は冷静に戦況を見つめていた。藤田からボールが出る直前に首を振り、佐藤の位置を確認。ゴール前にスペースができていることを察知するや、2列目から走り込む佐藤よりも先に動き出してそのスペースに到達し、小池の折り返しをダイレクトでクリアした。

 優れた技術も多彩なパスももちろん遠藤の持ち味だが、戦況を見る目、展開を読む力が凡百の選手と一線を画す。鈴木政一監督も称賛を惜しまない。

「サッカーを本当によく知っている。ここでタメをつくったり、ここでは横パスで時間を作ったり、ここでは突破のプレーとか。経験も豊富ですし、彼の場合は人を生かすパスを出せるし。小川航基とルキアンとは当然違いますが、選手の特徴に合わせたパスを出せるのは本当にすごいといつも思っています。リキ(上原力也)とか若い選手が(遠藤から)学んでくれれば」

 遠藤加入後の4試合、チームは無敗だ。そして、無失点。

「(無失点は)十分に評価していいと思うし、相手にそんなに多くチャンスもなかったと思うし、守備の部分は少しずつ良くなっている。できる限り失点しないようにこれからもやっていければと思います」

「来た当初に比べれば、一人ひとりの特徴が把握できてきたと思います。まだ100パーセントではないですし、練習する時間がほとんどないので、試合で合わせていくという形にはなりますが、自分の特徴も分かってもらえていると思いますし、もう少し時間が経てば、よりいいコンビネーションだったり、タイミングも合ってくると思う。極力、早い時間で手応えを得られるようなプレーを増やしたい」

 遠藤もチームにはまだまだ伸びしろがあると感じていた。

「上位との差を縮めるためにも勝ち点3を取りたかったですが、こういう試合もあるとは思う。こういう試合を勝ちに持っていけるようにしたい」

 磐田のチーム状態が上向いているのは確かだ。もちろん、そのすべてが遠藤効果ではないだろうが、加入以前と以後では明らかにゲームの『落ち着き』や『運び』が違う。

 過密日程の中、ピッチで勇躍する背番号50。遠藤は今、プレーするたびにチームにポジティブな効果をもたらし、同時に自身の価値を高めている。


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