10月17日、明治安田生命J2リーグ第27節が開催された。味の素スタジアムでは東京ヴェルディと栃木SCが対戦。雨が降り、気温がグッと下がった中で行なわれた試合は互いに勝利を目指したが、スコアレスドローで決着した。

上写真=東京Vで敵地で引き分けて5戦未勝利となった栃木だが、内容はポジティブなものだった(写真◎J.LEAGUE)

■2020年10月17日 J2リーグ第27節(観衆1,842人/@味の素)
東京V 0-0 栃木

・東京Vメンバー◎GKマテウス、DFクレビーニョ、DF高橋祥平、平智広、福村貴幸(81分:近藤直也)、MF山本理仁(63分:新井瑞希)、藤田譲瑠チマ、佐藤優平、FW山下諒也(89分:大久保嘉人)、端戸仁(81分:小池純輝)、井上潮音(63分:森田晃樹)

・栃木メンバー◎GKオビ・パウエル・オビンナ、DF溝渕雄志(70分:瀬川和樹)、柳育崇、田代雅也、黒﨑隼人、MF大島康樹(62分:山本康)、禹相皓(62分:岩間雄大)、西谷優希、森俊貴、FW榊翔太(70分:矢野貴章)、明本考浩

大変、悔しい試合でした(永井監督)

 ハードな戦いぶりに定評がある栃木は覚悟を決めていた。試合開始から徹頭徹尾、東京Vにプレッシャーをかけ続けていった。その狙いは明々白々。相手にボールを回させない。意のままにはビルドアップさせない。つまりは永井ヴェルディを、永井ヴェルディたらしめないことにあった。

 果たしてその狙いは奏功する。2トップの明本、榊がボランチへのパスルートを寸断しつつ、相手のCBにプレッシャーをかけていく。そして連動して2列目以降の選手がボールを何度も回収した。ポゼッション率は前半、東京Vが7割近くに達していたが、割り切った戦いぶりで栃木は決して相手のペースにさせなかった。ボールは持たしても流れは決して渡さなかった。

「ヴェルディがボールを動かすのは分かっていました。ポジショナルプレーというんですかね。それに対してわれわれは、ポジションにつく前にプレッシャーをかけてボールを奪ってしまおうと。それが一つのポイントでした。今日の2トップ(榊、明本)はそういう意図で起用し、彼らにスイッチを入れてもらおう、中を締めてもらおうと思いました」

「われわれがセットした形になるとどうしてもミスマッチになる。ヴェルディの選手の個々の技術の高さもありますし、彼らのストロングを出させる前に、トランジション(切り替え)のところでプレッシャーをかけてボールを奪えばチャンスになると分かっていた」

 ブロックを築いて自陣に引きこもるよりもアグレッシブに前へ。栃木の指揮官、田坂和昭監督のプランが見事に実行された試合になった。東京Vの永井秀樹監督も「立ち位置のズレ」について試合後に語っていたが、栃木の圧力が、東京Vのプレーを少なからず狂わせていた。

 前半を0-0で折り返した後半、とくに60分過ぎからは、栃木がその持ち味を発揮してみせる。岩間、山本を投入してプレスの強度を維持すると、セカンドボールの回収で相手を上回り、連続攻撃を仕掛けていく。とにかくボールの争奪戦に強い。東京Vに息つく暇を与えず、自陣に釘付けにさせる時間帯もあった。

 しかし、それでもゴールは生まれなかった。栃木攻撃陣のフィニッシュ精度の問題と、最後の最後はやらせない東京V守備陣の集中力が大きかった。試合はスコアレスドローで決着する。

「今シーズン初めてアウェーゲームにサポーターが来てくれました。試合前にみんなでサポーターに感動を与えるようなゲームをしようと話していた。勝ち点3が取れればベストでしたが、選手は期待に応えて90分間、本当によくプレッシャーをかけ続けてくれた。そこは評価できると思っています。もちろん、かい潜られるシーンもあったんですが、帰陣の早さがわれわれの武器になっているので、最後の最後、GKも含めて全員で守ったところもよかった」

 田坂監督は、敵地でアグレッシブに戦って勝ち点1を得たことに胸を張った。対する永井秀樹監督の評価はこうだ。

「正直、大変悔しい試合でした。ボールを保持する中でチャンスを作る作業を繰り返しながら、何度か良い形で崩しもできましたが、最後のところですね。非常に悔しいです。反省はありますが、マイボールにしてからはプラン通りやれたことは選手はよくやってくれたと思います。決め切るところの精度をさらに上げていくことをまたやっていきたいと思います」

 両指揮官のコメントが、ゲーム内容を物語る。手応えを得た栃木と悔しさを味わった東京V。この試合に限れば、ポジティブなのは栃木の方だろう。

現地取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE


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