強敵・大宮アルディージャに向かっていく20歳のストライカーがいた。明治安田生命J2リーグ第7節で、J2デビューを果たした榎本樹だ。埼玉県出身で、地元デビューの幸運を引き寄せた長身FWが自分に厳しく向けた反省の言葉とは。

上写真=先発でJ2デビューとなった榎本。この45分を糧にする(写真◎J.LEAGUE)

■2020年7月25日 J2リーグ第7節(@NACK:観衆人)
大宮 1-0 松本
得点:(大)戸島 章

「自分から申告しました」

 いきなり先発でのJ2リーグデビューだ。

 2位をいく大宮アルディージャとのアウェーゲームで、布啓一郎監督は榎本樹の名前を先発リストに書き加えていた。埼玉県東松山市出身だから、「地元で念願のリーグ戦初登場」ということになる。誰にでも巡ってくるわけではない貴重な機会だから、これもプロになった大きな勲章…ではあるかもしれないが、榎本にとっては諸手を挙げて喜べるものでもなかったようだ。理由はもちろん、試合に0-1で負けたこと。

「このスタジアムも子どもの頃に試合を見に来ています。思い出の場所でデビューできてうれしいですが、勝利で飾れなくて残念です」

 もう一つの理由は、自分のパフォーマンスに納得がいかないことだった。

「監督には後半のことは考えるなと言われていました。なんとか大宮のディフェンスを崩してやろうと思ったんですけど、前半はきつい時間が続いて守備が多くなりました。それでも数少ないチャンスを決めるのが自分の仕事ですが、結果に表せなくて残念でした」

 タイトなディフェンスが信条の松本山雅FCにあって、186センチの長身を見込まれて攻撃の先陣となる1トップを任された。相手ボールになると5-4-1の配置を取るスタイルでは、1トップは守備でパスのコースを限定し、奪って攻撃に転じたら早めに受けてボールをキープし、周囲の攻撃参加を促す必要がある。

 だが、「ゲーム勘がなかったので、周りと合わせるのが難しかった。そこができないと結果を残せないので、これを糧にしていきたい」と反省の弁ばかりが出てくるのだ。実際に前半の45分でお役御免。仲間に後半の戦いを託すしかなかった。

 それでも、ロングスローで相手を脅かすなど、攻撃のバリエーションを増やす役割は果たした。「ロングスローを投げられるのは自分から申告しました。ああいう武器も今後出していければ相手に脅威になるかなと思います」と自己アピールを忘れることはない。

「個人としてもチームとしても、今日のような試合を勝ちにつなげないと厳しい。この試合がいい例になったと思う」

 さっそくJ2の厳しさを肌で感じた45分。「榎本は高さを生かしてやってくれればと思います」「若い選手も経験を積んで、層が厚くなると思う」と布監督からの視線も熱い。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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