ファジアーノ岡山の大卒ルーキー、野口竜彦の登録ポジションはFWだが、第3節で左SBとしてJリーグデビューを果たした。大学時代の二度の大ケガを乗り越えて第一歩を踏み出し、さらなる成長を期している。

上写真=Jリーグデビューを果たし、次のチャンスを見据える野口(写真◎石倉利英)

左SBで出場機会をつかむ

 7月5日のJ2リーグ第3節、ジュビロ磐田とアウェーで対戦したファジアーノ岡山は、試合終了間際の88分に3人を同時に交代させた。そのうちの一人、DF松木駿之介に代わって出場したのが、野口竜彦。中央大から今季加入したルーキーで、これがJリーグデビュー戦だった。

 スコアは1-1ながら、岡山は退場者を出して10人で戦っており、逃げ切りを狙う状況。左SBに入った野口もアディショナルタイムを含めて約7分間、ほとんどボールに触らず守備に追われたものの、全員が懸命に体を張って守り抜いた岡山は、そのまま勝ち点1を獲得した。

 プロとしての第一歩を踏み出した一戦を「長かったです」と振り返った野口は、「大学が、やり切った感じで終われなかったので」とも語る。長かったのは、そこに至るまでの道のりだ。

 前橋育英高(群馬)から中央大に進み、スピードを生かしたドリブルからのクロス、利き足の左足から繰り出す正確なキックを生かしてウイングなどで活躍。だが3年時の2018年9月、左ヒザの前十字靭帯を損傷すると、4年時の19年6月には左ヒザの外側半月板を損傷した。4年時に中央大は関東大学リーグで1部に復帰したが、二度の大ケガに見舞われた野口は登録メンバーから外れ、1試合もプレーできず。「3年のときに2部で優勝して、ずっとやりたかった1部に昇格したのに、プレーできなかった」という悔しさを味わった。

 それでも、学生コーチという立場でチームに貢献することを目指し、分析班の一員として対戦相手のスカウティングを担当した。「試合全体や、こういう選手が見ていてワクワクするな、といったことを、客観的に見ることができた」ことが、プレーできる状況になった現在に生かされているという。

 今季の登録ポジションはFWだが、岡山加入後は左SBやボランチでプレーしている。磐田戦は左SBのレギュラーのDF徳元悠平が急きょ欠場となり、控えメンバーに入って出場機会がめぐってきたが、第4節までの磐田戦以外の3試合はメンバー外。次の出場機会をつかむために、さらなるレベルアップが必要なことは本人も自覚しており、全体練習後に居残りで左サイドからのセンタリングを繰り返す姿が見られた。

 デビューを果たした2日後、自身のブログで両親や、岡山と中央大のスタッフなどへの感謝の思いをつづった。「少しの時間でしたけど、とりあえずスタートラインに立てたかな。クロスやキックは、もっと出していきたいし、シュートも狙っていきたい。プロ選手として、サッカーのことを考えて生活できるのは、いいですね」。1試合でも早く次の一歩を刻むべく、鍛錬を続けている。

取材・写真◎石倉利英


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