川崎フロンターレが痛い星を落とした。6月29日の明治安田J1リーグ第22節で、東京ヴェルディに0-1で敗戦。セットプレーから失点し、攻め続けたもののついにゴールを割ることができなかった。長谷部茂利監督は「自分の落とし込みが足りなかった」ことに反省を求めた。

上写真=0-1で敗れた瞬間、脇坂泰斗が座り込む。東京Vの堅守に苦しめられた(写真◎J.LEAGUE)

■2025年6月29日 J1第22節(観衆:22,326人@味スタ)
東京V 1-0 川崎F
得点:(東)深澤大輝

「選手たちはもっとできる」

 勝てば3位に浮上して、次節に迎える首位の鹿島アントラーズにも勝てば、ついに念願の首位も――。その可能性は、東京ヴェルディに厳しく守られた0-1の黒星によってついえた。

 川崎フロンターレが戦った22試合のうち、ゴールを一つも奪えなかったのはこれで4試合目。相手は京都サンガ、ファジアーノ岡山、そして東京Vだ。いずれも激しい集中守備を基盤にするチームである。しかも、東京Vには0-0、0-1とホームでもアウェーでも完封されている。

 長谷部茂利監督は東京Vに敗れると、問題点を分かりやすく言葉にした。

「相手のアタッキングサードに入る回数が、前半は少なかった。またボールの取り方や取った回数もそんなに良くなかったという意味でも、後半の終盤は1-0という点差からああいうオープンな形で自分たちが攻める、ヴェルディさんが守るという形になってしまいました。全般的には自分たちが表現したいプレーを、少しのずれであったり、動きやポジショニングのつながりでの崩しや、ボールを動かしてアタッキングサードに迫っていくのがちょっと少なかったなと思います」

 それは、自分の責任だとも主張する。

「選手たちはもっとできると思うんですよ。これまでうまくいっていなかったわけではなくて、今回は試合で表現できなかった。選手が表現できなかったのは私の伝え方が悪かったという考えを持っているので、今日のところは自分の伝え方とかプレビューも含めて、落とし込みができていなかったなと感じました」

 気になるのは、東京V戦ではつなぎのシンプルな横パスでもミスが目立ったことだ。「止める蹴る」を自慢にしてきたチームには珍しい。

 過去のパス成功率を見てみると、2018年から順に86.1%(リーグ1位)、85.4%(同2位)、85.1%(同1位)、82.9%(同2位)、83.3%(同1位)、81.5%(同3位)、81.8%(同4位)と高い数値を残している。今年はこの東京V戦を前にした21試合で79.3%(5位)と、80%を割り込んでいる。そういえば、選手から「止める蹴る」を追求するような言葉があまり聞かれなくなった。

 そうなるとますます、長谷部監督の「ずれ」や「ボールを動かしてアタッキングサードに迫っていくのが少ない」の発言が気になってくる。パスが成功すればそのまま勝利が約束される、というわけではないものの、重要な要素であることに変わりはない。

「自分の良さを何も出せなかった」とうなだれたのは、ボランチの橘田健人。

「相手コートに入ったらしっかりブロックを作られるので、守られることが続いて、局面を打開する、裏を変えるパスをもっと出せたらよかった」

 東京Vが組んできた5-4-1の堅いブロックに苦しんだことが分かる。単独ドリブルで糸口をつかもうとした伊藤達哉も、同じだ。

「(東京Vが)しっかり規律正しく守備をしていたので、自分がはがして中を見たときにも相手のほうがちゃんと戻っていた」

 ただ、相手の鋭い守備が原因のすべてではなかった、という実感が、山田新にはある。

「ビルドアップのところでロングボールを入れるのは悪くないけど、マイボールになる確率が低い選択をしている。リスクを負わないというのがチームのやり方としてあるんですけど、もうちょっとボールを大事にしてもいいのかなと思うところもあります」

 同じロングボールでも、もちろん成功したパスもあった。後半開始から登場した山田は54分に中央から右に走って高井幸大からのスルーパスを受け、77分には今度は左に走って三浦颯太からのパスを引き出した。前者は半身のまま右足でシュートを放ったがヒットせず、後者は体の強さを生かして強引に抜け出して左足で狙ったもののGKマテウスに阻まれた。「決めなければいけなかった」と山田は悔やんだが、ショートパスだろうがロングバスだろうが、崩しを成功させる回数を増やすには、この2つのシーンのように技術的にも判断の上でもパスに失敗がないことが絶対条件だ。

 早めの猛暑に見舞われた3連戦の最後だったという難しさもある。でも、だからこそ「止める蹴る」の正確性で相手を走らせて疲弊させるような微調整は急務になりそうだ。「もっとできる」その姿を、昨季までの指揮官である鬼木透監督が率いる次節の相手、鹿島に見せつけるしかない。


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