上写真=京都は3度に渡ってサポーターを熱狂させた。川﨑颯太が84分に同点ゴールを奪って見せた(写真◎J.LEAGUE)
■2025年6月21日 J1第21節(観衆:12,954人@三協F柏)
柏 3-3 京都
得点:(柏)小泉佳穂、垣田裕暉、原田亘
(京)米本拓司、長沢 駿、川﨑颯太
「自然に走ってました」
「もちろん、勝ち点1で満足しているわけではないですけど」
3-3のドローに持ち込んだ京都サンガのキャプテン、川﨑颯太の話だ。
「柏に3を取らせなかったという面では、別にネガティブではないと思います」
2位の柏レイソルに対して、勝ち点3差で追うのが3位の京都。勝てば得失点差で順位をひっくり返せるが、負ければ引き離される試合で、アウェーで3度もリードされながらそのたびに追いついたのだから、上位争いを考えても悪いことばかりではない。
しかも、84分に3度目の同点ゴールを決めたのが川﨑自身なのだ。
左から奥川雅也が送ったクロスに、192センチの長身FW長沢駿が突っ込むが、わずかに合わない。だが、予期してその奥から走り込んでいった。
「雅也くんがフリーになって上げられると思ったときに、きつかったけれど自然に体が走ってました。駿くんが2点目のターゲットになったから絶対にマークがきつくなるだろうと思っていたので、その後ろに、もう感覚で走って、本当にボールが来て、無理やり気持ちで押し込んだって感じかな」
うまくボールを前に押し出してから、GK小島亨介が出てくる直前に右足をぐっと伸ばしてアウトサイドで押し出すように送り込んでみせた。
最後のところで走り抜く、というのはいかにもこのチームのタフさの象徴だが、その実、相当な苦しみをピッチの上で味わっていたと明かす。
「相手の素晴らしい運びや展開力でかなり苦しめられましたし、2-3になったときにはかなりメンタル面はしんどかった。それでも交代選手や全員が声を出してくれたし、全員の心の火がギリギリ消えなかったからこそかなと思います」
チームメートが走らせてくれて生まれた同点ゴール、というわけだ。
確かに柏は素晴らしく、近距離のパスワークと左右の揺さぶりを絶妙にミックスさせてきて、京都は特に前半は分かりやすく翻弄された。自慢のプレスもあっけなく空転させられる。
「渡井(理己)選手や小泉(佳穂)選手のポジションが気になって、自分たちが少し下がってしまったところに、真ん中の山田(雄士)選手にかなり自由に持たせてしまって、後ろも行ききれない、前もつぶしきれない、という感じで非常に中途半端に、ふわっとさせてしまった。そうすると相手は簡単にミスしてくれない。もう一つ制限をかけるとか、パスを出させないように中間ポジションを取ってから激しく出ていく、ということは後半は何度もできたわけなので、それを前半に自分たちでしゃべりながら修正できたらよかった」
前から襲いかかる自分たちの強みが、技術で軽々とかわされたときにどうするのか。これから夏に向けてどうしたって運動量が落ちる中で、京都が直面するであろうリスクは隠せない。そのことに対する事前のレッスンを、柏に胸を借りて受けたと考えれば、悪くはない。
苦しくても声を掛け合いながら、最後は足を動かしてくれる。その事実をキャプテンがゴールという形で証明してみせたこのゲームは、柏に引き離されなかったという意味を超えて重要なものになるだろう。