川崎フロンターレは5月18日に行われた明治安田J1リーグ第17節で、セレッソ大阪に2-0で勝利を収めた。なかなかゴールがこじ開けられない中でも、じっくりと構えながら試合をコントロールしたのが山本悠樹。いま、何かをつかめそうなのだという。

上写真=山本悠樹が香川真司とバトル。強さも身に着けてきた(写真◎Getty Images)

■2025年5月18日 J1第17節(観衆:22,070人@U等々力)
川崎F 2-0 C大阪
得点:(川)エリソン2

サウジアラビアの戦いが刺激に

「いま、何かをつかめそうな感じなんです。その感覚を大事にしたいなと」

 山本悠樹が成長の大きなステップに立とうとしている。

 いまや、川崎フロンターレのコントロールタワーだ。緩急も前後も左右も高低も、つまり時間も空間もすべてがその感性によって方向づけられ、決定づけられる。長谷部茂利監督も「よく考えてプレーできる選手で周りも動かせる」と、チームのエンジンを絶賛する。

「最近、そういうものがすごく見えている感覚があるんです」

 そういうもの、とは、例えばセレッソ大阪戦で鮮やかに中央に差し込んだ54分の一本のパスのこと。中盤の下がり目でボールを収めて顔を上げると、前線の左にはマルシーニョ、中央には山田新。

「左に持っていっても作れるかなとも思ったんですけど、一瞬、真ん中が空いたように見えて、最近、そういうものがすごく見えている感覚があるので、その感覚を信じて出しました」

 斜め右前へと背後に走った山田の足元にぴたりとつける最高のパス。しかし、山田のシュートはGKに止められてしまった。

「決まってればよかったなっていう感じですけど、そういうところが見えているということはすごくいいことだと思うので」

「見える」のはやはり、あのしびれる経験がトリガーになったという。

「サウジアラビアに行ってあの中でプレーしてみて、もっと落ち着いてやらないといけないという課題と反省があったので、それをすごく意識してやっています。落ち着いてやると自分の一番いいところが出るなということは、ここ最近感じているところなんです」

 ACLエリートファイナルズを戦い、決勝まで登りつめた経験が自分の中の何かを刺激した。覚醒の予感。

「あとは、前の選手がちゃんと動き出してくれていることがすごくありがたいので、それをちゃんとていねいに見つけていければと思います。あとはそこに通すだけ。それが得意なプレーヤーだと思うので、そこは自分の長所としてより違いを出せるようにやっていければいいかな」

 動き出してくれる一人が、54分にパスを届けた山田だ。

「シンはいつもいい動きをしてくれてますし、最近、点が取れてはいないですけど、昨年もたくさん点を取っていたので、いつか入ると思います」

 だから、何度でもチャンスを作るつもりだ。

「まあ、実際には本人に厳しいことも言いますけど、いつか入るだろうと思ってるので、チャンスをたくさん作ってあげられればいいかな。一つ入ると乗ってくると思うので、焦れずに見てあげられたら」

 最後はエリソンの2ゴールでたたみかけて、今季2度目の連勝を手にした。序盤で苦しんだリーグ戦もこの連勝で上昇の一歩を踏み出した。またACLに挑むためにはタイトルが必要で、そのためには、背番号6のさらなるコントロールが必要だ。

「揺さぶり続けて、相手がなかなか出にくいところに人を立たせて、ボールを触らせて、誰が出てくるかを見ながら、僕がそういうポジションに入ったりしながら、相手のズレを作っていかないと」

 5バックで閉じてきたC大阪を崩そうとしたそんな作業の一つひとつはそのまま、これからリーグ制覇のために立ちはだかる難敵を攻略する手立てになるだろう。その覚醒の時を見逃さない手はない。


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