上写真=関根貴大は冷静なクロスで逆転ゴールをアシストしてみせた(写真◎J.LEAGUE)
■2025年5月17日 J1第17節(観衆:36,002人@埼玉)
浦和 3-2 FC東京
得点:(浦)石原広教、松本泰志2
(F)マルセロ・ヒアン、遠藤渓太
「賭けた方がいいと」
先制されても追いつき、再びリードされてももう一度、食らいつき、最後には逆転してみせる。浦和レッズがFC東京から奪ったこの勝利は、1カ月後にクラブワールドカップを控えるチームにより強固な結束をもたらした。
それは、例えば関根貴大の言葉から分かる。
「スタメンが固定される中で、サブの選手は物足りなさはあったと思います。こういう苦しい展開になったときにサブのパワーを発揮して、チームが一つにならなきゃいけない。それが体現できたと思います」
その関根自身が、4月からは先発で起用されていない。この日も73分からの登場だった。
「スタメン11人でサッカーしてるわけじゃない。うまくいかない苦しいゲームが絶対生まれてくる中で、サブの選手がどううまくピースをはめていけるかも大事になってくるとずっと思っていました。それが今日の試合はうまくできたかなと」
80分の同点ゴールは67分から入った金子拓郎のクロスを、関根といっしょに73分から入った松本泰志が押し込んだもの。そして90+3分の逆転弾は、関根が送ったクロスに松本が合わせて決めた。まさに「うまくピースをはめた」のだ。
「選手が自分のポジションを勝ち取っていくには、ギラギラしたものを見せないといけない。そういうものが見せられたのなら、少しは前に進めたかな」
逆転ゴールを導いたクロスは、右CKの流れから右にこぼれたボールを自らシュート、相手に当たったボールを今度は逆サイドに上げたものだ。群がる相手の頭上をきれいに越えるように、ふわりと柔らかく、高く送り届けた。
「速いボールを上げても良かったと思いますけど、自分がボールを受けた瞬間は、FC東京の選手が団子になっていたのが見えて、一度シュートを打って跳ね返ったときに、あそこに誰かが飛び込んできてくれるのに賭けた方がいいと思って、ああいうボールのチョイスになりました」
松本がそこにいることを目にしたわけではなかったのだという。それでも的確な瞬時の判断を下すことができた。「なんであのシーンで冷静になれたのかちょっと分からない」と自分への小さな驚きもあったようだが、「いい判断だったと思います」と胸を張った。
ところで、関根はマテウス・サヴィオとの交代だったから、左サイドハーフとして投入されている。これが「練習でもやっていない、ぶっつけ本番だった」のだが、その5分後に荻原拓也に代わって原口元気がピッチに送り込まれると、原口が左サイドハーフに入って、関根は左サイドバックに下がることになった。
こうして、原口と縦に並ぶ関係が生まれた。これには心地の良い既視感があったのだと明かす。
「練習ではサブ組の僕たちはFC東京の選手のポジションでやらないといけなくて、元気くんがシャドーで僕がワイドというポジションでした。その縦関係が意外とスムーズにできて、どっちかがサイドに張ってどっちかが仕掛ける、という感じのいいイメージがあって、違和感はなかったんです」
浦和は今季、先制された試合は、3引き分け4敗だった。つまりこの日は、8試合目にして初めての逆転勝利。最終盤でひっくり返した興奮の結末は、「仮想FC東京」を命じられたサブ組の意地がもたらしたものでもあったのだ。