上写真=左から湘南の鈴木淳之介、柏の熊坂光希、岡山の佐藤龍之介、東京Vの綱島悠斗(写真◎J.LEAGUE)
柏対岡山、東京V対湘南からピックアップ
10日に柏レイソル対ファジアーノ岡山、11日に東京ヴェルディ対湘南ベルマーレの2試合を取材した。順位の浮き沈みはあるものの、4チームとも今季それぞれのスタイルを貫いて存在感を示している。
リカルド・ロドリゲス監督のもと新たなポゼッションサッカーで快進撃を続ける柏、J2からの昇格組ながら木山隆之監督が練り上げたコレクティブかつアグレッシブなプレーで予想を上回る結果も残している岡山、城福浩監督の妥協を許さないチーム作りでインテンシティーの高いサッカーを展開する東京V、山口智監督が5年目のシーズンを迎え積極的な守備とダイナミックな攻撃を見せる湘南。それぞれが指揮官の目指すサッカーを選手が懸命にやり遂げようとする姿勢に好感が持てる。
この第16節での対戦は柏が「今日は攻守にわたって完成度の高い試合ができていた」とロドリゲス監督が胸を張ったプレーで岡山を圧倒し、2―0で勝った。湘南も東京Vを2―0と下して4戦ぶりの勝利を挙げたが、こちらはより拮抗した戦いをセットプレーとカウンターから効率良く得点して逃げ切った。
4チームには今季、あるいは昨季途中から大きく成長して、観戦者にとって見るべき若い選手たちが多くいる。
柏ではボランチの熊坂光希が絶大な存在感を放ち、チームの攻守を支える。柏のアカデミーで育ち、東京国際大学を経て昨季チームに加わっているから、今季就任したロドリゲス監督がリクエストした選手ではないが、その戦術にビタリとはまり不可欠なレギュラーとなっている。この日も中盤でボールを受けては的確な展開を繰り広げ、相手の木山隆之監督から中盤でボールが奪えず押し込まれた要因として「アンカー(熊坂)を捕らえることができなかった」と嘆かせた。時に前線にまで駆け上がってダイナミックなプレーも見せる、これまでになかったスケールの大きなボランチだ。
岡山では19歳の佐藤龍之介が今季5試合目となるスタメン出場して期待されたが、押し込まれる展開でボールに触る回数も限られ、対峙する俊足の左ウイングバック小屋松知哉の対応に追われた。後半にはディフェンスが本職の選手と交代となり、持ち味を発揮できずに終わった。それでもここまでチーム最多の3得点をあげるなど、才能の片鱗は覗かせており、9月に行われるU-20ワールドカップでの活躍とともに今後のプレーに期待したい。U-17ワールドカップやAFC U-20アジアカップでも存在感を示したように高いテクニックを持ちながら「戦える」希少な選手だ。
東京Vは湘南戦で「後半の交代が私のミス」と城福浩監督が悔やんでいたが、前半は互角以上の試合運びを見せながら、後半リズムを崩して2点を失った。この日も無得点に終わり、16試合を戦って11ゴールと得点力不足は深刻だ。木村勇大や染野唯月はストライカーとして高い資質を持っており、山見大登や新井悠大のスピードは相手の脅威になっているものの、その持ち味がなかなかかみ合わない。ハードワークを最優先するあまり、やや柔軟性に欠けるきらいがある。
このチームで現在最も得点を挙げているのがDF綱島悠斗だ。188センチの長身を生かしたヘディングが大きな武器でセットプレーではターゲットとなる。昨季途中まで中盤でプレーしていたように技術、パス能力も高く、ここから効果的な攻撃が展開されることも多い。CBにコンバートされて能力を発揮しており、注目に値する。
湘南では昨季中盤からCBにコンバートされた鈴木淳之介が異彩を放っている。帝京大可児高出身の21歳。昨季途中までは落ち着いたボールさばきと長短のパスを使い分けるプレーメーカータイプだったが、山口智監督のアイディアで3バックの左を任されるようになると独特のスタイルを築き上げた。対人に強く守備もしっかりできる上に機を見ては自らボールを運んで攻撃の起点となる。縦パスを躊躇なく供給できるところも大きな魅力だ。東京V戦でも中盤でボールを奪いそのまま右足でブレ球の強烈なミドルシュートを放った。GKの正面を突いて得点にはならなかったが、その能力の高さを垣間見せたシーンだった。
湘南には鈴木淳と同期で今季はチームのキャプテンも任される、スケールの大きさを感じさせる鈴木章斗や、アグレッシブにゴールを目指す福田翔生のストライカーコンビも今後の成長が楽しみな選手。見ていてワクワクさせられる。
台頭する若手の多くは、すぐに海外クラブのターゲットになる時代だ。彼らのプレーをいつまで見られるのか、という余計な心配をしつつ、その将来を想像しながら見るのも面白い。今のうちにスタジアムに足を運んで見たい選手たちだ。
文◎国吉好弘