上写真=登場から3分後にネットを揺らし、勝利を呼び込んだ田川亨介(写真◎J.LEAGUE)
国立でプレーするのは初めて
登場からわずか3分後のことだった。負傷したレオ・セアラに代わってピッチに入った田川亨介が大仕事をやってのけた。
右サイドのライン際でボールを収めた鈴木優磨が前線へパスを送る。相手GKが前に出るのをためらうポイントに送られたボールに追いついた田川は、左足でゴールに流し込んだ。鈴木のパスも見事だったが、GKの位置と動きを見極め、冷静に蹴り込んだ田川も見事だった。
「ハーフタイムに優磨くんと、裏が空いているからドンドン抜けろっていう話をしていて。もう本当その通りに動いて、体が勝手に動いて。優磨くんも本当にいいボールくれましたし、あとは流し込むだけみたいな感じだったんで。ほんと狙い通りだったなと思います」
狙い通りに動いて決めたこのゴールが、結果的に勝負を決める1点になった。
ボールをゴールに流し込んだ田川はそのままゴール裏へと走り、大勢のサポーターの前で胸のエンブレムを叩いた。湧き上がるスタンド。連勝中のチームを感じさせるようなシーンだった。
先制を許す苦しい展開の中、鹿島は前半のアディショナルタイムに舩橋佑のゴールで1−1と追いついた。後半に入り、試合のすう勢を決める次の1点をどちらが奪うか、激しい攻防が繰り広げられていた。
そこでスコアを動かしたのが、田川だった。
「やっぱりこの観客の中で決めてたっていうのは本当に感慨深いですし。インパクトを残せたと思うんで、これからもっと続けていきたい。国立でプレーするのは初めてだったので」
FC東京時代、国立競技場で開催されたルヴァンカップ決勝前日にケガをしてベンチ外になった。だから、田川にとっては今回が初めての国立だったという。大舞台で、決勝点。格別の思いがあった。
「やっぱり1つ取って、自信にもなりましたし、体も何だろう、軽くなったというか、気持ち的にも落ち着いた。点を取ることはやっぱり大事だなと」
5月3日の町田戦(14節)で鹿島移籍後初ゴールを奪ったFWは、そう言ってゴールへの意欲を示した。これで鹿島の連勝は「6」。ゴールの感覚を取り戻した田川が活躍すればするほど、その数はさらに伸びていくことだろう。