鹿島アントラーズ対川崎フロンターレ。鬼木達監督が現在率いるチームと、昨年まで指揮を執ってきたチームのいわば「鬼木ダービー」は、現在のチームである鹿島の逆転勝利で幕を閉じた。5月11日の明治安田J1リーグの第16節で戦い終えた指揮官の思いとは。

上写真=古巣への勝利に拳を握った鬼木達監督。試合後にはテレビの解説で訪れていた「愛弟子」の田中碧との再会も喜んでいた(写真◎J.LEAGUE)

■2025年5月11日 J1第16節(観衆:59,574人@国立競技場)
鹿島 2-1 川崎F
得点:(鹿)舩橋 佑、田川亨介
   (川)佐々木旭

「自分の価値を証明しなければ」

 試合終了のホイッスルが国立競技場に響いた瞬間、鹿島アントラーズの鬼木達監督はいつもと同じように小さく、でも力強く拳を握って勝利を喜んだ。

 古巣の川崎フロンターレとの初めての対戦。その激突を前にして実感が沸かないと話していたが、実際に対戦し、しかも逆転勝利をもぎ取ったことで変化はあったのか。

 答えは「なかった」ということになる。

「変な感情の中でやるのではなくて、選手と一緒に目の前の相手を倒すことに集中できたと非常にうれしく思います」

 試合は7分に先制されたあと一方的に攻め込まれながら、前半終了間際に舩橋佑が自身のJ1初ゴールで同点とし、65分に田川亨介が逆転ゴール。2-1で逃げ切って見事に6連勝として、首位をキープした。称賛したのは守備についてだ。

「苦しい中で、最後に点を取れたのもそうですけども、もう1つは守りのところですよね。守備であれだけ押された中で、全員がかかわったこと、それが勝利につながったと思います」

 この6連勝で失点はわずかに2。複数失点はなく、4試合でクリーンシートだ。好調の礎に堅守がある。

 鬼木監督がその名を上げたのは、無冠だった川崎Fを一躍、常勝チームに押し上げたから。その実績を鹿島でも現実のものとするために戦っている。6連勝のうちの3つ目、横浜FCに勝利を収めたときには「僕はここで勝って、自分の価値を証明しなければならないんです」と力強く勝利へのこだわりを口にしていた。だから、川崎F相手に苦しい内容でもなんとか勝利に導いたことを真っ先に喜んだ。

「試合中はいつもと変わらないですね。勝つことだけを持ち込んでやっていました。できればもっと自分たちの強み出して勝てればよかったですけども、やっぱり(川崎Fは)うまさがあってなかなか取れない部分もあって、ただ最終的には川崎を相手にして戦えたのは自分自身の中でよかったのかなと思います」

 勝利を最優先にさせる中でも「試合が終わればやっぱりいろいろな思いもありますね」と、やっぱり特別な感情を隠すことは難しい。

「自分も鹿島の一員としてここに来ているのは、やっぱり優勝するためで、そこを主として考えながらいくのが自分のスタイルだと思います。もちろんいろんな思いがありますけども、そこに大きなものを持たないことが大事なのかな、と、いまはこの立場としては思ってます」

 自分に唱えるのは、あえて思いを持たないこと。ということは、思いはあるということだ。そしてそれを大事に抱き締めながら、今度は鹿島を王座に導くために戦っていく。


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