鹿島アントラーズから輝く才能が解き放たれた。4月29日の明治安田J1リーグ第13節・横浜FC戦の90+4分にFW吉田湊海が鈴木優磨に代わってピッチに登場した。クラブ史上最年少のJ1デビューとなったきらめきの1分半を、本人はもちろん、鬼木達監督や選手の言葉によって記録しておく。

上写真=吉田湊海は1分半のデビューに物怖じすることなく走り回った(写真◎J.LEAGUE)

■2025年4月29日 J1第13節(観衆:13,252人@ニッパツ)
横浜FC 0-3 鹿島
得点:(鹿)チャヴリッチ、鈴木優磨、オウンゴール

鹿島のエムバペ

 目標はでかいほうがいい。

「この選手になりたい、というのはあまりなくて、A代表になってワールドカップで優勝するというのが自分の中の最大の目標なので、そこに向けてやっていきたいなと思っています」

 90+4分、丸刈りの頭がひときわ目を引くFW吉田湊海がピッチに登場した。16歳9カ月14日でのJ1デビューは、鹿島アントラーズのクラブ史上、最年少出場だ。身長170センチ。背番号は45。人呼んで「鹿島のエムバペ」。

 その交代のシーンは、儀式のようでもあった。鈴木優磨に代わって吉田。同じ鹿島のアカデミーで育った29歳の先輩と手を合わせて、偉大なる一歩を踏み出した。

「これからはユースが支えていくと思ってます。非常にいい選手が出てくるので、まあいつか彼らに引導を渡される日が来るんだろうなと思ってます。まだまだ負けるつもりはないですけど」

 鈴木はうれしそうに笑った。

 鬼木達監督はもちろん、競争あっての起用だったと舞台裏を話す。

「シンプルに競争の部分で、前線で少し人が足りないのも実際ありましたけども、今日連れてくるかどうかというところでいくと、Aチームでは数回しかプレーしていないけれど、昨日の練習で結果を残さなかったらたぶん出てきていないと思います。でも、そこでしっかりと、数回のプレーで点を決めたこと、それは周りを納得させるだけの十分なものだったので、競争の中で勝ち取ったと思ってます」

 さらには横浜FCとは点差が開いたことも大きく、「選手たちが3-0にしてくれたのは、彼の出場機会を与えてくれた部分でもあると思います」と先輩たちの奮闘も称えた。そして、未来を作る実感もある。

「最年少出場というのは自分は分からなかったけれど、これが彼の刺激、ユースの刺激になってくれればいいと思います」

 三竿健斗もサポートを惜しまない。

「良ければ使う、ということが表れた場面だと思います。前日練習でちょっと入っていいプレーができていたので、またいい競争になるんじゃないかな。若い選手が何でもできるようにサポートするのが経験ある選手たちですから」

 鬼木監督の言う通り、ベテラン選手をも納得させる「エピソードゼロ」があったわけだ。U-17日本代表の一員として4月のU-17アジアカップでも3得点を決めたストライカーは、そんな監督や先輩たちのバックアップを受けて、さらなる競争に挑んでいく。

「トップの練習に参加して、慣れればできると思うんですけど、まだフィジカルや技術は足りないと感じています。トップチームだからというわけではなく、自分のプレーを出せればと思っているので、貪欲にやっていきたいと思います」

 これが、デビュー戦で明かした若きストライカーの決意である。

 この日はピッチに入ってからおよそ1分半で終了のホイッスルが鳴ったため、ボールに直接関与したのは中盤で溝口修平にさばいた一度だけ。しかし、デビュー戦とは思えない堂々とした雰囲気と大人びた口調は、精神の成熟をも感じさせて、その分も飛躍が楽しみになってくる。


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