まだ1勝と苦しむアルビレックス新潟の中盤で奮闘する男がいる。ボランチの星雄次だ。4月26日の明治安田J1リーグ第12節、柏レイソルとのアウェーゲームでもフル出場し、攻守をつなぐクレバーな活躍を見せた。チームを浮上させるために、背番号19の存在は不可欠だ。

上写真=星雄次は仲間を生かすためのアクションを繰り返してチームをつないでいる(写真◎J.LEAGUE)

■2025年4月26日 J1第12節(観衆:13,030人@三協F柏)
柏 1-1 新潟
得点:(柏)渡井理己
   (新)小見洋太

「勝っていないから…」

「本当に失点のところだけが…」

 星雄次が悔やんだのが32分のシーンだ。アルビレックス新潟から見て左サイドから久保藤次郎に持ち運ばれ、3列目から山田雄士にポケットに潜り込まれたところにパスが出て、後ろに戻されたボールを渡井理己に蹴り込まれた。敵ながら見事なまでのコンビネーション。

「最初に僕が行った背後に(山田が)出てきたので自分ではなかなか見えなくて、そこに(秋山)裕紀がついていってマイナスのところが空いてしまった。難しいですね、そこは。もう1回映像を見て確認したい」

 久保が持ったときに、危険を察知した星は前線から猛然と戻ってきて目の前に立ち、それ以上の前進を防いだ。だが、その背中側に走った山田に入れられたところに秋山がマークに付いたために、空いたのが中央。角度と段差をつけて崩された。

 ただ、それ以外は我慢を続けることができたという手応えもある。前節で京都サンガに1-2で逆転負けを食らった苦々しさをかみ締めて踏ん張って、柏にも1点は奪われながらも、その後のピンチは全員でしのいで踏みとどまった。

「失点してからは本当に我慢だねという話は中ではしてました。ボランチのところでも相手のシャドーの選手とボランチの選手を捕まえるのが難しい部分もあったけれど、それでもスライドしながら我慢強くやれたところはよかったかなと。だから本当に、失点のシーンだけはちょっとずらされてしまった。もったいなかったです」

 先制するまでは面白いようにパスがつながりながら、その後は途端に柏に押し込まれてゴールにまで持ち込まれてしまった。この時間帯が試合の大きな転換点になっただろう。

「難しいところですけど、心理的なところもあるのかな。やっぱり勝っていないから1点を守ろうという意識が多少なりとも出たのか…」

「やっぱり自分も決めたい」

 星は柏戦も含めて8試合に先発出場しているが、欠場した4試合は負傷で離れていたから。いまやボランチとして新潟の中心にいる。

 そのスタイルは変幻自在だ。器用にどんな役回りでもこなすことができる。最大の特徴は「人のための立ち位置」を取ることではないだろうか。

 自分自身が輝くためというよりは、誰かが困ったときにいつでも助けてあげられるようなタイミングと場所を選んでいて、しかもそれをナチュラルに実行する。わざとらしさがない。まるで空気のように、あるいは、澱みのない水の流れのようにスムーズに。だから、ボランチのパートナーが誰であっても、あるいは前後のセンターバックやFW、サイドバックやサイドハーフに誰が入っても、特徴を理解して引き出し、それぞれを結びつけて強くしなやかにしている。

「自分がチームを左右するようになれれば本当にいいと思います。ボランチというのはやっぱりそういうポジションですからね」

 そのためには、「自分のため」のアクションを増やしてもいいかもしれない。この試合の前日、かつてのチームメートであるFC東京の高宇洋が鮮やかなミドルシュートを決めたが、星はそれを目にして思った。

「あれを見て、やっぱり自分も決めたいなと思いました。いいシュートでしたよね。僕もそういうところに入ってくる機会は徐々に増えてきているので、チャンスがあれば狙っていきたいなと」

 残念ながら、この試合はシュートゼロ。ゴールへ向かっていくいい意味でのわがままが増えてくれば、それが新潟の逆襲ののろしになる。


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