上写真=国立競技場でサポーターとともに「シャー!」。俵積田晃太の今季初ゴールは衝撃的だった(写真◎J.LEAGUE)
■2025年4月25日 J1第12節(観衆:44,519人@国立競技場)
FC東京 3-0 G大阪
得点:(F)俵積田晃太、高宇洋、オウンゴール
「止められないだろうなって」
あまりにも見事な70メートル独走弾! 86分のそのとき、俵積田晃太には見えていた。
「前にスペースがあったので、もう自分で行ってやる、っていう気持ちでいきました」
なんの迷いもなかった。自陣でボールを受け取るとターン、そのまま左寄りに出て一気に加速した。相手がついてくることができないと見るや、今度はまっすぐゴール方向へ進路を取った。中谷進之介が止めようと立ちはだかり、岸本武流も後ろから挟みに来る。
でも、その数的不利を逆手に取る賢さと技術がある。
「2人で来たときって意外と間を抜けるんですよ。自分の中ではそういうイメージなのでいい感じに抜けられて、決めることができて良かったです」
フィニッシュもクール。ブロックに入った福岡将太の股下を突き通すように射抜いて、ゴール右へと送り込んだ。
「すごくうれしくて、気持ちのいいゴールでした」
自らが決めた衝撃的な今季初ゴールを振り返るのに、そう言ってかすかに相好を崩した。いつも物静かで表情をあまり変えない若きドリブラーがどれだけ喜んだのかを知るのには、ポーカーフェースにこぼれるその小さな笑みで十分だった。
3バックの中央に入った岡哲平は、突き進む背番号33を後ろから見守って「行けー!」と叫びながら、確信していた。
「練習で1対1をやってるので(G大阪の選手は)止められないだろうなって。正直、自分も止められないんで(笑)、あそこはもう行けるでしょって思ってましたよ」
その通りになった。
「本当にみんなに感謝しかないです」
62分からピッチに入った俵積田には、爆発させたい思いがあった。
「いままでの気持ちが全部吹っ飛んだような感じです。自分もチームも勢いづけられる1点になったんじゃないかな」
昨年は主に、4-2-3-1システムの左サイドハーフでウイング的にプレーして地位を確立した。ワイドに構えてから外へ、あるいは中へとスラロームして、まるで機敏な蛇のようなしなやかさで相手を混乱させて抜き去っていった。
今年、松橋力蔵監督が就任すると3-4-2-1システムが採用され、俵積田に主に与えられたのは左シャドーのポジションだった。
よりゴールに近い混雑したポジションからでは、広いスペースで常に前を向いて自分のテンポでドリブルをスタートしていたこれまでのようにはいかなかった。ストライカーとしての役割も求められるわけで、ときには高い位置で幅を取ったり、また中で起点になったりと工夫も凝らしながら、でも11試合を重ねてもゴールは生まれず、これまでとは異質の難しさと格闘しているようだった。
そして、チームも8試合勝利なしと停滞した。なんとかしたかった。だから、自らの一撃で重たい空気を一変させた勝利に喜ばないわけがない。
「正直、自信もあまりなかったし、シュートを打つときにいろんな感情が湧いてきてすごくやりづらかったんです。でも今日は、そういう感情がなくて本当に集中できました」
吹っ切れた、とか、乗り越えた、というのが実感に近いだろうが、ようやくの初ゴールによってそれを成し遂げることができたのは自分だけの力ではない、と力説するところに、新しい俵積田の誕生を感じさせる。
「決まった瞬間はやっと入ったな、みたいな感じでしたけど、みんなのおかげで決まったので、本当にみんなに感謝しかないです」
ところで、90分+4分に決まったチームの3点目は、ワンツーで高宇洋を抜け出させ、そのまま足を止めずにボックス内に進入し高からの短いスルーパスを受けて誘発したオウンゴールだ。最初のゴールは得意技であるドリブルから生み出し、3点目は狭い場所に潜り込むプレーで手にした。
これまでの持ち味を生かした先制点と、新しいポジションで求められる役割を全うしたダメ押し点。2025年の俵積田晃太はそのどちらにおいても有用である、という進化を力強く示した国立競技場の夜だった。