4月11日の明治安田J1リーグ第10節で、FC東京は国立競技場に柏レイソルを迎えた。35分に先制して逃げ切りを図る局面で、90+4分にまさかの失点。ドローに終わって7試合ぶりの勝利を逃した。守備の要の木村誠二はその失点を、そして自分の「立ち位置」をどう認識しているのか。

上写真=木村誠二の粘り強い守備は光ったが、最後に失点(写真◎J.LEAGUE)

■2025年4月11日 J1第10節(観衆43,813人@国立競技場)
FC東京 1-1 柏
得点:(F)仲川輝人
   (柏)木下康介

甘い

 引き分けだが、まるで負けたような重々しさにFC東京は支配されていた。35分に仲川輝人が先制し、後半も時間を進めて、あと少し乗り切れば、2月26日の名古屋グランパス戦以来、実に7試合ぶりの白星を手にするはずだった。

 ところが、90+4分に同点ゴールを浴びて勝ち点2がするりと逃げた。

 なにしろこの7試合、3分け4敗と勝ちなしだ。松橋力蔵監督はこの1-1という結果は「自分を含めた甘さ」が原因の一つだと厳しい顔で絞り出した。失点のシーンは「1対1でのタイトさを出し切れなかった」とも。

「甘さ」という単語はほかの選手の口からもこぼれ落ち、例えば木村誠二だ。

「ちゃんと人についていればボールに触られることはないし、触られたとしてもブロックにはいけるはずなので、本当にそういうちょっとした甘さが失点につながった」

 忌々しい失点は、相手のスローインからだった。何度も裏を取られて危険だった自分たちの左サイドをまたも攻略され、ニアゾーンに熊坂光希にするりと潜られて折り返され、中央で木下康介に蹴り込まれた。このとき木村はセンタリング、またはシュートを予測して、ニアのコースを消すポジショニングを取っていた。

 試合直後で映像を詳しく確認していないが、と断った上で、木村はそのシーンを脳内で再生してみる。いくつもの反省が浮かんでくる。

「まずスローインのところで、あまりにも簡単に前を向かれてしまって縦に行かれています。あの位置からのスローインならもっとがっつりマークについて相手に下げさせることが一番のはずなのに、まずそこをやらせてしまったのが一つ」

 スローインもセットプレーだ。一瞬、できてしまった時間的・意識的な空白を突かれた。

「あとは、クロスのところ。苦し紛れのクロスだったら絶対に僕が埋めたニアのところにボールが来るか、もっと上を通り過ぎることになるはず。でも、相手が狙いを持ってクロスをしっかり上げてしまっているということは、寄せる選手の問題」

 熊坂への対応が後手に回った。

「そして、中のマークの付き方。これはもうチームでクロスの対応、守備の形は提示されているので、僕がニアを切ることも、それ以外の選手でマークをつかむこともしなければいけなかった。まだ映像を見ていないので、中で全員がマークにつけていたかはいまは分からないけど、本当にそこだけなので」

 逆に言えば、柏がこちらの対応を一つひとつていねいに、力強く上回っていったというわけだ。

ここから先はチームのことにも

 木村は3バックのセンターに入って、これで4試合連続フル出場だ。自身にとってはようやく初勝利を味わえるはずだったのが、目前で幻に終わった。

 それでも、柏のあの手この手の攻撃を食らいながらも、クロスや斜めに差し込んでくる嫌なパスを中央で一つひとつ粘り強く跳ね返し続け、無失点のままで時間を進めていった貢献は大きい。

「僕の役割として、真ん中で相手をつぶしたり跳ね返したり、そういうことが求められているわけで、そこに対してはしっかりやれることはやったとは思います」

 守備の要石としての自覚も手応えもあった。ただキャパシティーが広がった分、物足りなさを強く意識する自分がいる。

「でも、それにプラスしてもっと周りを動かさなければいけない。ロッカーで最後にみんなで話し合ったけど、もっと早くラインを押し上げなければいけないし、上げているんだったら、味方をもっと前に行かせなければいけないし、ボールの取りどころをどこにするか、後ろから声を出して指示しなければいけない」

 自分のことだけで満足するほど青臭くはなく、一刻も早くディフェンスリーダーとして君臨することを自らに強く求めている。あの1点がなければ、その決意はもっと力強く語られただろうが…。

「いま、自分のことはできているかもしれないですけど、ここから先はチームのことにもしっかり目を向けてもっとやっていかなきゃいけないんです」

 GK野澤大志ブランドンと3バックの脇を固める土肥幹太、岡哲平と守備陣はすべてアカデミー出身のメンバーだった。そのことを「本当にうれしい」とうなずいたが、守備のお手本は向こう側にいた。柏の3バックの中央にそびえる古賀太陽である。

「やっぱりすごく良かったですよね。ボールの持ち方やもらう位置など、かなり意識してプレーしている選手だと思いました。ボールの運び方もすごく嫌だったし。センターバック対決としては、お互い1失点だからイーブンだと言えるかもしれないけれど、やっぱりうまいなと思って」

 似たスタイルを標榜するチームで同じポジションを担う古賀の存在を、強く意識していたことを隠さなかった。そのプレーのすべてが参考になる。次に対戦するのは7月。そのときまでに、超えていたい。


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