浦和レッズは4月29日(現地)にサウジアラビアのリヤドでAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝第1戦、アルヒラル戦に臨む。前回王者とのアウェーゲームをいい形で終え、5月6日にホーム、埼玉スタジアムで行われる第2戦につなげられるか。

上写真=川崎F戦の後、浦和は決勝の地、サウジアラビア・リヤドへ旅立った(写真◎J .LEAGUE)

公式戦で11戦負けなしで第1戦へ

 浦和レッズは4月23日に等々力で川崎フロンターレとJ1第9節のアウェーゲームを戦い、先制を許したものの1-1で引き分けた。試合を終えたチームはサウジアラビアへ向かい、29日(日本時間30日・2時30分)にリヤドで行われるアジアチャンピオンズリーグ(ACL)決勝第1戦に臨む。

 川崎F戦ではお互いのつぶしあいでほとんど決定機のない前半を経て、後半の開始直後に一瞬のスキを突かれて失点。しかし、ここから徐々に盛り返して73分にブライアン・リンセンを投入、80分には3人を一気に交代して流れを引き寄せ、左サイドの崩しから荻原拓也の折り返しをリンセンがダイレクトで決めて追いついた。逆転には至らなかったものの、これで連敗を喫した開幕から3節以降は4連勝を含む7戦負けなしで、カップ戦も含む公式戦では11戦負けなしと、好調を維持してACL決勝を迎えることとなった。

 マチェイ・スコルジャ監督はこの試合について「狙いは勝利して勝ち点3を得ること。勝利を収めることによって、より自信を持ってACLに行くとともに、首位に近づく」と語っており、引き分けに終わったが「今日はベンチの選手たちが力になってくれましたので、それはうれしい点です。リンセンの重要なゴールのあとも、全員で攻撃的にプレーして、さらに決定機を作り続けましたが、1点に終わってしまいました。しかし、チームスピリット、メンタルのレベルは非常に高いものがあったと思いますし、そこには満足しています」と、流れを変えようとする、あるいは逆転しようとする選手たちの姿勢を称え、決戦への手ごたえを口にしていた。

 この日は1点を失ったものの、リーグ戦7戦負けなしの中ではわずか4失点と堅守が光る。それがチーム力を高め、好結果に繋がっている大きな要因だ。堅実なゴールキーピングを見せる守護神の西川周作を後ろ盾に、能力が高くミスの少ないアレクサンダー・ショルツとマテウス・ホイブラーテンのセンターバックが築く中央の守りはJ1でも屈指の堅固さを誇る。守備的MF岩尾憲のゲームをコントロールする力、さらに前線からの効果的なプレスも併せてレッズの守備力はアジアのタイトルを再び手にするために欠かせいない武器だろう。

 攻撃に関しては興梠慎三の復調で前線に起点ができるようになって改善されたが、まだ爆発的な力を発揮しているわけではない。様々な選手が得点しているのは悪くないが、興梠も含め絶対的な得点源がなく、新加入のホセ・カンテのフィットが待たれるところ。

 ただし、間近に迫ったACL決勝に向けては、現状から打開策を探らなければならない。ACLの現行のフォーマットでは、外国籍選手の出場枠は「3人+1人(=アジア人)」であり、ショルツ、ホイブラーテンは欠かせないとなれば、攻撃に使える枠は一つ。ダヴィド・モーベルグもルヴァンカップの湘南ベルマーレ戦で復調ぶりを示したが、サイドでプレーする選手は複数いるため、興梠のバックアップとしてストライカーが必要なことを考え合わせれば、この日の活躍で存在感を示したリンセンを登録するのではないか。

 チームの強みとなっている守備力を生かしてアウェーの第1戦では、まず失点を抑えて引き分け以上の結果をつかみたいところだ。アルヒラルは2017年大会、2019年大会でも決勝で対戦した因縁の相手。2017年は浦和がアウェーで1-1と引き分け、ホームで1-0とし、通算2回目のACL優勝を果たした(1回目は2007年)。それに対し2019年はアウェーで0-1と敗れ、ホームでも0-2と連敗してタイトルを逃している。

サウジアラビア代表が各ポジションに

画像: サウジアラビア代表が各ポジションに

 3度目の対戦となる今回も前回、前々回同様まずは敵地リヤドで第1戦を行う。過去の例が示すようにまずここで引き分けに持ち込むことができれば優勝の確率は高まるはずだ。もちろん勝利できればなお良いが、相手はACL常連の強豪チームであり、そう簡単ではない。試合を進めながら現実的な選択をとることも求められる。

 昨季はポルトガル人のレオナルド・ジャルデム監督に率いられ、アルヒラルは決勝で韓国の浦項スティーラーズを2―0で下して(コロナ禍の影響で1試合のみで決着)2度目の優勝を飾った(アジアクラブ選手権を含めれば4度目)。現在は日本でもよく知られるJリーグ初代得点王、アルゼンチン人のラモン・ディアスが指揮を執り、2季続けて決勝進出を果たした。

 今回のチームも主力は2019年とほとんど変わらない。サウジアラビア代表の主力が各ポジションを占め、要所に強力な外国人を擁している。ディフェンスはアリ・アルブライヒとFC東京でもプレーした韓国代表のチャン・ヒョンスが中心。統率が取れた守りを見せる。中盤では代表でもキャプテンを務めるサルマン・アルファラジュとカタール・ワールドカップで存在感を示した長身のモハメド・カンノが展開力を発揮。カタールW杯でアルゼンチンを下す決勝ゴールを挙げたFWサレム・アルドサリのドリブルも強力だ。

 加えて昨年のACLでMVPとなったマリ代表のムサ・マレガがおり、先の準決勝であのマイケル・オルンガ(元柏レイソル)擁するカタールのアルドゥハイルを7―0で下した衝撃の試合において4ゴールを叩き出したナイジェリア代表のオディオン・イガロがいる。さらにトップ下でテクニックを発揮するブラジル人ミシャエウや、アルゼンチン人のルシアーノ・ピエットとタレントが豊富だ。一筋縄ではいかない相手であるのは間違いない。

 とはいえ、浦和のディフェンスも十分に対抗できる力はあるとみる。酒井宏樹が復帰できれば左の明本考浩と合わせて局面の勝負で負けない陣容がそろう。ここまで磨いてきた連動したプレスを実践すれば、失点するにしても最小限にとどめられるのではないか。そして攻撃では、つけ入るスキが全くないわけではない。アルヒラルはボランチの2人が攻撃的な資質を持つため、ディフェンスラインとの間にスペースが生まれやすい側面がある。カギを握るのは小泉佳穂の存在だ。小泉が良い形でボールを受けられれば、チャンスが広がる。ここのところやや調子を落としていた印象もあったが、川崎F戦では好プレーを見せていた。全体的は押し込まれる展開と予想される中で、小泉が豊富な運動量と視野の広さを生かして相手ディフェンスに穴を開けることができれば、浦和に良い流れを呼び込めるはずだ。

 ホームでの第2戦はスタンドを埋めたサポーターの大声援も期待できるだけに、まず敵地での第1戦で、引き分け以上の結果を残したい。

文◎国吉好弘


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