明治安田生命J1リーグで残留を決めたヴィッセル神戸は10月29日、第33節で川崎フロンターレと戦った。優勝争いを繰り広げる相手に最後にゴールを奪われる1-2の惜敗だったが、そこには大きな差があったと酒井高徳は自分たち自身に厳しく反省を求める。

上写真=酒井高徳は「一喜一憂しない」ことを強豪への条件だと考えている(写真◎J.LEAGUE=福岡戦から)

■2022年10月29日 J1リーグ第33節(等々力/22,110人)
川崎F 2-1 神戸
得点者:(川)マルシーニョ、家長昭博
    (神)小林祐希

「元通りにサッカーをしたら」

 J1第33節は2位の川崎フロンターレと、第34節は首位の横浜F・マリノスと。ヴィッセル神戸のラスト2試合は、優勝争いに直接的に影響を与えるマッチメークになった。

 10月29日の川崎F戦は、アウェーで1-2の敗戦となった。ミス絡みで先制され、51分に小林祐希の素晴らしい直接FKで同点に追いつきながら、VARの介入もあって84分にPKで決勝点を奪われた。

「単純に集中力の問題じゃないですか」

 負けた原因は明らかだから、酒井高徳の言葉はむしろ歯切れがいい。

「何も目的がなく試合をしているのかなと思ってしまいます」

 自分たちのメンタリティーのあり方に厳しい言葉を投げかける。今季はAFCチャンピオンズリーグを戦いながらJ1では残留争いに巻き込まれていたが、10月22日に清水エスパルスとジュビロ磐田が1-1で引き分けて、残留が決まった。

「残留争いという不可抗力がなくなった状態で川崎とぶつかる試合で、次のマリノス戦もそうですけど、リーグの2位と1位を実力で倒すことは、今後のヴィッセルにとって大事だと理解するかどうか。残留争いが終わったからどうでもいいとは思っていないとしても、なんとなく試合をするのかしっかり戦うのかでは大違いなので」

 5連勝を遂げて残留を決めたからこそ、次の一歩を力強く踏み出すには川崎Fは申し分のない相手だった。だが、物足りなさを残してしまった。

「そこもメンタリティーだと思います。一喜一憂する選手はこういう結果を招いてしまうんです。残留が決まったから、決まらなかったからではなくて、次の1試合が大事だということを続けてやらなければならない。2試合、3試合先を見るのではなくて、この試合に勝ってそうして次に行くという結果で、気づいたら5連勝していたわけです。1試合1試合、やることをやったから5連勝があった。でも、いい試合のあとに悪い試合をしてしまうのは、目の前の試合へのフォーカスの仕方が悪いとしか言いようがないと思います。どんな状態でもやらなければいけないメンタリティーを持たなければ」

 神戸がもう一つ上のクラスに進むには、一喜一憂しない冷徹さが必要だという実感だ。

 川崎F戦は、吉田孝行監督の言葉を借りれば「前半の出来が悪かった。前半だけで言えば川崎にやられたけれど、後半は互角に戦えた」という90分。酒井はそれを、こんなふうに表現した。

「後半は修正したというか、当たり前にサッカーをして、あるべき姿でサッカーをした、ということだと思います。よくなったというよりは、言葉が見つからないですけど、元通りにサッカーをしたらあそこまで戦えた。そのことはわかっていなければいけない」

 これもまた、メンタル面の反省である。

「自信を持ってビビらずに、というか、例えばすぐにキーパーに下げるけれど、何の意図があって下げているのか。意図があって下げたり横に渡すならいいけれど、意図がないまま下げたり、サポートが来ないから下げたり、前へのコースを探していなくて最初から下げたりしているし、守備でも後ろが怖くて出ていかないとか、後ろの選手もしゃべらないとか、こうしたことはすべて自信からくるものです」

 それでも、後半に持ち直した……いや、酒井の言葉からすれば「あるべき姿でサッカーをした」ら戦える十分な手応えはあった。でも、勝つまでには至らず、ドローにも持ち込めなかった。

「内容はそこまで大きな差があったと思いません。でも、勝ちきれるところと勝ちきれないところでは大きな差があると思う」

 2023年の神戸が高みを目指すには、絶対的に必要な要素だ。

「自分たちがJリーグで優勝争いをしたいなら、1試合に対する思いを川崎のように貪欲にしないといけないと思います。内容がよくなくても、ああやってPKを取る執念、あきらめずに追いかけるという気持ちで、自分たちがやっていることを徹底する90分をこなせるチームは強い。いろいろなところで見習いたいことがあったので、次に生かしたい」

 次は11月5日。ホームでの今季最終戦だ。相手は優勝がかかる横浜FM。

「ホームで簡単にシャーレを上げられるのを見たくないので、しっかり反省を生かして勝てるように頑張りたい」

 未来の神戸の第一歩が、そこで示されなければならない。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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