明治安田生命J1リーグにおいて最も印象深いアシストを表彰する「月間ベストアシスト」。8月は、柏レイソルの椎橋慧也を選出した。サッカーマガジンWEBも参加する「DAZN Jリーグ推進委員会」では今シーズンも「月間表彰」を実施、当サイトではベストアシストをピックアップして、その選手へインタビューしていく。京都サンガF.C.から武藤雄樹が奪った、アディショナルタイム8分の劇的逆転決勝ゴールを導いた一本のパス、その秘密は?

上写真=椎橋慧也が劇的逆転決勝弾を生んだ京都戦のアシストが8月のベストに(写真◎J.LEAGUE)

1本目の「ミス」が効いた

――8月6日のJ1第24節、京都サンガF.C.戦で、90+8分に武藤雄樹選手が劇的な逆転決勝ゴールを決めました。これを導いた椎橋選手のパスを、8月の月間ベストアシストとして選出させていただきました。おめでとうございます!

椎橋慧也 ありがとうございます。いいパスを出せたという感覚はあったので、それを評価していただいてうれしかったですね。ベストゴール、ベストアシストの選考があるのは知っていましたが、僕のアンカーという後ろめのポジションであっても、前でゴールに直結するプレーができたということで、そこを評価してもらったことがうれしいです。

――こぼれ球を収めて前を向き、右の武藤選手に送ったあのシーン、まずは詳しく振り返っていただけますか。

椎橋 あの場面の前に、僕が一本、武藤さんに出したパスがカットされているんです。それが弱くて相手に前に蹴られたボールを、(高橋)祐治くんがインターセプトしてくれて、それが僕のところに来たのが始まりでした。フリーだったのでターンしたときにゴール前に森海渡と武藤さんがいて、森には出せないと一瞬で判断して武藤さんを選びました。武藤さんが相手と入れ替わって前に出られるぐらいのパスを強めに送ろうという意識でした。

――ターンする前に首を振ってゴール前を確認していますね。

椎橋 森のことはそこで見えていて、武藤さんはその前のプレーでパスを出していたのでそこにいるのはわかっていました。左から入ってきた森が2人に挟まれていて、そこに入れても取られるかもしれないと思って、近いほうの武藤さんを選んだ感じですね。

――「入れ替わって前に出られるような強さ」とおっしゃいましたが、そこがあのパスの一番のポイントになりそうですね。

椎橋 ぶつける感じで蹴りましたけど、でもちょっと優しくトラップしやすいようなパスになるように意識しました。

――その相反するような性質を両方とも込める意味で、ボールの回転も変にかけずに「素直なボール」になりましたね。

椎橋 そうですね。武藤さんは右利きなので右足に送って、そのまま打ってくれという意識で出したので、ゴールになって本当に良かったです。

――今回のような椎橋選手の「勝負パス」はほかにも多く見られますが、これはまさにはまったな、という感覚だったのではないでしょうか。

椎橋 武藤さんには普段から「ここに出せ」と言われていますし、僕も信じて出しているので、試合でもできていると思います。今回、点につながったことは自信になっていて、それ以降はさらに前線に配球できるようになってきた感覚はあります。

――ラストプレーの逆転ゴールと劇的でしたが、あの瞬間はゴールに向かうことに迷いはなかったですよね。

椎橋 武藤さんに出せば、あそこさえ通せれば……という思いがあったので、ていねいに出した感じですね。

――先ほどおっしゃったように、直前のパスが相手にクリアされたことで、さらにそのていねいさが高まったという意識でしょうか。

椎橋 1本目のほうは状況が違っていて、武藤さんの体の向きや相手と武藤さんのポジションの駆け引きもちょっと違っていて、あえて弱めに出しています。それが取られてしまって、でも今度は体の向きが良かったので、1本目は弱くしたけれど今度は強く出そうと意識しました。

――ちょうど柏のファン・サポーターのみなさんが陣取るほうのゴールで決まったので、武藤選手をはじめみんな彼らの前に走っていきましたけど、椎橋選手はいなかったですよね。

椎橋 僕は足が痛かったのと、みんなが行っているし、一人は戻っておこうかなと思っていました。

――さすが、冷静です。


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