川崎フロンターレは逆転優勝のためには勝ち続けるしかない。勝つことで首位を走る横浜F・マリノスに猛烈な「プレス」をかけていく。ジョアン・シミッチは公式戦6試合連続フル出場中と出番を増やしてプレーの格も上がってきて、インテリジェンスとゴールでチームを支えていく。

上写真=鹿島戦はレアンドロ・ダミアンが負傷で欠場したが、シミッチ(中央)らブラジル人トリオの個性が勝利の一翼を担った(写真◎J.LEAGUE)

「一番重要なのは自分たち」

 ジョアン・シミッチの存在感が、試合のたびに増している。7月30日のJ1第23節浦和レッズ戦から、公式戦6試合で連続フル出場中である。

 その最新の試合は、8月27日のJ1第27節・鹿島アントラーズ戦。2点を先行したあと、1点を返されると、相手の勢いが増して押し込まれたものの、しのぎきった。鹿島は中盤をダイヤモンド型に配してきて、アンカーのシミッチに対して仲間隼斗が厳しくチェックする構造にしてきた。だが、「イメージはできていました」とシミッチは涼しい顔だ。

「鹿島だけではなくて、どのチームもうちと対戦するときは後ろからのビルドアップを防ぐために、アンカーのところにマークを強く置いてくるんです。いままでも多くのチームがそういう対策を取ってきていたし、ゲーム前からそうなるイメージでした」

 川崎Fを破る方法として、4-3-3のアンカーの脇のエリアを攻略するのが定番になっているが、シミッチは「インテリジェンス」で対応すればいいと考える。

「システム的に一人ひとりがインテリジェンスを持たないといけないと思います。プレッシャーをかけに出る場合には有効なシステムですが、アンカーの脇にはスペースが生まれてしまいます。でも、自分たちの特徴を生かすためにこのシステム採用しているわけですから、味方がどこに立っていて、相手がどこに入りたがっているのかを一人ひとりが理解しなければいけません」

 構造的な弱点は、頭で補えばいい、というわけだ。鬼木達監督も「中盤は3人いるわけで、(アンカー1人ではなく)3人が中央にいると思えば強固ですよね。だから、進め方次第なのです」として、同じように考え方=インテリジェンス次第で強みになると考える。いま、そのインテリジェンスの中心人物が、シミッチということになる。

 ただ、鹿島に押し込まれて、あわや同点に追いつかれそうな場面があったのも事実。最終的にはトレーニングでも採用したことがないという5バックで逃げきった。

「個人の意見ですけど、少し守備のときにマークを捕まえにいくプレスのタイミングがいつもと違ったように感じました。ゲームの中で改善して、どのタイミングでマークをかけにいくのかの共通理解を持っていければよかったと思います」

 シミッチの違和感は、そのまま後半の劣勢につながった。でも、解決の方法が見えているから慌ててはいない。

「もっと自分たちでボールを保持しながらプレーすることが必要だったでしょう。ボールを持てなかったところを含めて、守備で悪いサイクルに入ってしまったと思います」

 攻めるためにボールを保持すれば、相手に攻められることはない。失えば、攻め込まれる。鹿島戦は後者の時間が長くなった。

 新型コロナウイルス感染症と台風8号の影響で3試合の延期を余儀なくされ、ここからは過密日程になってくる。続くサガン鳥栖戦は中3日でのゲームだ。そんな苦しいときに効くのがセットプレー。鹿島戦でもシミッチが絶妙のタイミングでジャンプしてヘディングシュートを放ったチャンスがあった。GKにはじかれたものの、得点の匂いがしている。

「日々の練習で繰り返していましたし、ゴールできそうなタイミングだったけどできませんでしたね。ただこれから先、まさに試合数が少なくなってくるとセットプレーはカギになりそうです。セットプレーも私たちの強みなので、しっかり有効活用したい」

 特に、追う立場だからこそ、セットプレーからのゴールも、5バックにして守り抜くスクランブルも、確実に勝つために必要だ。

「一番重要なのは自分たちだと思っています。やるべきことをしっかりやって、1試合1試合勝つことだけを考えていきます。そうすることで相手にプレッシャーがかかりますから、とにかく自分たちに尽きます」

 鳥栖も、さらにその次の湘南ベルマーレも、厚みをもって走ってくるチーム。シミッチの周辺を狙ってくるだろうから、そのインテリジェンスの見せどころが山ほど出てきそうだ。


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