上写真=鬼木達監督もパリ・サンジェルマン戦で指揮を執って刺激を受けた(写真◎福地和男)
裏と表の関係
逆の側から物事を見てみる。
「自分たちがやりたかったことを、本当に当たり前のことを当たり前にやって、精度も高く回数も多く強度も高くやっていましたね」
鬼木達監督は7月20日のパリ・サンジェルマン戦で指揮を執りながら、彼らのプレーをそう観察していた。
「自分たちにとっては守備の反省点でもある場面は、逆にこういう攻撃をしたいということと裏と表の関係で、新たに高いところを見てやっていこうという話をしてます」
世界トップクラスの選手たちに突きつけられたピンチは、これからの戦いの中で自分たちがチャンスを生み出す種になる。「普段、選手に伝えていることを実際には彼らが表現してくれた」からだ。彼らがやったことを、自分たちが習得してピッチの上で実践していくモチベーションがチームの中で生まれている。
「彼らは世界でもトップなので当然ですが、それを肌で感じることができたのは、私たちが言葉で言うよりも強く受け止めてくれると思います。感じるだけなら誰でもできますから、そこから何を起こせるか。気づいたあとのことを期待しています」
ピンチをチャンスにする、という意味では、もう一つ。7月28日にトップチーム関係者5人、29日に同4人で新型コロナウイルス陽性判定が出て、さらに28日には1人が濃厚接触疑い者としていずれも隔離されていると発表された。19日には大島僚太が右ハムストリングの肉離れを負って全治まで6週間との発表もあった。
「こういうときだからこそというか、いまチームの力を集結させるときです。ここで何ができるかで真価が問われます」
一昨年も昨年もリーグ優勝を手にするまでに大きな困難があった。それを突破したからこそ、頂点に立った。
「いつもそうですけど、逆にこういうときに期待してしまうんですよね。だから今回も期待があります」
選手たちの底力を信じているからだ。そして、監督以下スタッフも全力を尽くす。
「当然、単純な期待ではなくて、わたしたちもできる限りの最善の準備はしていきます。どんなときでも一番必要なものは、やはり準備。怠らないようにしていきたい」
そう言って鬼木監督も表情を引き締めた。