川崎フロンターレがフランスの強豪、パリ・サンジェルマン(PSG)と戦った7月20日のプレシーズンマッチ。1-2で敗れた90分の中でも、川崎Fが攻めた時間もあってスタジアムを沸かせた。ところが、家長昭博はまったく異なる実感を味わっていた。自分たちに真剣に遊ぶ余裕がないことへの危機感。

上写真=家長昭博は「こんな機会はなかなかないので、楽しみながらやろうかなと」(写真◎福地和男)

■2022年7月20日 PSGジャパンツアー2022 第1戦(@国立/64,922人)
パリ・サンジェルマン 2-1 川崎F
得点者:(パ)リオネル・メッシ、アルノー・カリムエンド
    (川)山村和也

「上に行けば真剣勝負できる場所がある」

 さすが、家長昭博。

 パリ・サンジェルマンを相手にボールを失わず、決定的なシュートを放って、存在感を示した背番号41に、そんな印象を抱いた人も多かったのではないか。しかし…。

「相手は遊びだったと思うし、こっちは何もないと思います」

 当の本人はサバサバしていた。マルシーニョを走らせてカウンターを仕掛けたシーンもあるが、「うちは本来はそういう形ではない。チームとして余裕のあるプレーはなかったので、実力通りの感じでした」。何かができたというよりも、いつものようにプレーさせてもらえなかったことの後悔が先に立つ。

 20分にクロスボールのこぼれ球から左足のドライブショットを放ったシーンは、GKドンナルンマのファインセーブに阻まれたものの、あと一歩まで迫る好シーン。ところが、家長自身の感覚は「手応えはなかった」。

「ボールが浮いていたのでああいうシュートしか打てませんでしたけど、キーパーがでかくて入る気がしなかった。枠には行っていたけど、余裕で触られました。キーパーが大きいからコースがなくて、あれがサイドの角に行ったら入るかどうか、というぐらい」

 PSGとの決定的な差は、「真剣な遊び」の中に感じた。

「真剣勝負の中でも遊びがあると思うし、だから見ていて楽しかったり驚きもある。僕たちにはそういう余裕がまだない。そういうプレーが意表を突いたりゴールになったりするので、余裕を持って楽しませる感覚を持てないと、ああいうレベルにはいけないと思います。真剣に遊べるように頑張っていかなければいけない」

 その危機感は、常にJリーグの中で真剣に遊びながらプレーしようとする家長自身のプライドの裏返しでもある。ここ2年の連覇の道中で、何度となく驚きや意外性を披露してきたチームが、今年は思うように勝てていない。

「どの試合も課題が多いですし、いまは悠長なことを言っている暇もないです。優勝争いをする中で残り試合も少ないし、今日はお祭りでしたけど、それはさておいて、Jリーグで勝たないといけない現実があります。時間はないし、結果を出さなければいけないので、チームとして危機感を持ってやらなければ3連覇はできません。今日とは別の話ですけど、そこは忘れないようにしたい」

 首位の横浜F・マリノスとは8ポイント差。2試合消化が少ない分で最大勝ち点の6を手にしたとしても、まだ届かない。この試合でジェジエウが復帰した好材料はあるものの、家長の言葉から待ったなしの真剣さがにじみ出る。

「世界はやっぱり広いと思いますし、彼らも真剣にやったらもっと違ったと思います。それはわかっているけれど、若い選手は一緒にプレーして真剣勝負でやりたいと思っただろうし、僕ももう歳ですけど、上に行けば真剣勝負できる場所があるわけだから、そこに行きたいと思っています」

 そのためにも、J1で逆転優勝しなければならない。

取材◎平澤大輔 写真◎福地和男


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