明治安田生命J1リーグの第18節は、後半戦の最初のゲーム。6月25日、ジュビロ磐田は川崎フロンターレとのアウェーゲームに臨み、難しい前半を過ごしながらも後半に修正して同点に追いつき、勝ち点1を手に入れた。貴重な1ポイントがもたらすものとは?

上写真=伊藤槙人の同点ゴールを、アシストの遠藤保仁(50)やベンチメンバーが祝福(写真◎J.LEAGUE)

■2022年6月25日 J1リーグ第18節(等々力/19,024人)
川崎F 1-1 磐田
得点者:(川)山根視来
    (磐)伊藤槙人

伊藤監督が最後に仕掛けた奇襲

 85分、右CKを得たジュビロ磐田は、百戦錬磨のプレースキッカー、遠藤保仁が中央へと蹴り込んだ。高さはそれほどないが、鋭くカーブをかけたアウトスイングのスピードボールだ。

 ちょうど、ニアサイドのゴールエリアの角のあたり。伊藤槙人は走り込んだコースのやや後ろに飛んできたボールを、重心を後傾にかけ、背中から倒れるようにしながら頭に当てた。浮き上がったボールがきれいな弧を描き、GKチョン・ソンリョンの伸ばした右手の先を通って逆サイドネットにするりと収まった。

「練習からやっていた。狙い通りのゴールだったと思います」と蹴った遠藤。「やっとさん(遠藤)のボールが良かったから、合わせるだけでした」と決めた伊藤。

 このCKを獲得したのは、後半に伊藤彰監督が「オーガナイズを変えた」ことが発端になっていると言えるだろう。前半は川崎Fのボール回しにいいように振り回されて攻め込まれ、33分に失点し、こちらのシュートはゼロ。そこで後半は5-4-1だった立ち位置を、伊藤監督の言う「5-3-2にして、(杉本)健勇と(大森)晃太郎でアンカーと2センターバックにプレッシャーをかけた」ことで、息を吹き返した。

 川崎Fがボールを動かす起点になっていたこの三角形から自由を奪うことで、少しずつ高い位置にプレーエリアを押し上げた。あのCKはセカンドボールを回収して、押し込み、もう一度ルーズボールをつないで、ジャーメイン良が粘ってこぼれたところを、最後は右から小川大貴がフィニッシュ、これがブロックされて得たもの。ゴールに近い位置に迫ったからこそ手にすることができたのだ。

 最後に関わったのは、どちらも交代でピッチに入った選手である。そのジャーメインは「負けていたので積極的にランニングを仕掛けた」とスピードという自分の強みを存分に生かした。「まったく満足していない」としながらも、前向きに振り返る。

「自分たちのサッカーをして勝つのが大前提ではあるんですけど、こういう厳しい試合で勝ち点1を持って帰ることができたのは、J1で戦っていく上で大事だと思います」

 85分に同点としたあと、伊藤監督は89分にシャドーの上原力也に代えてDFの大井健太郎を投入している。川崎Fの反撃をブロックするために最終ラインの人数を増やす、ためではなく、そのまま前線に置いてどんどんプレッシャーをかけるタスクを与えた。勝ち点1を死守するスペシャルな策を、伊藤監督は「奇襲です。相手が嫌がると思ったので、勝ちにこだわって勝ち点を取りにいきました」と抜け目なかった。

 このまま1-1で首尾よくドローに持ち込んだのは大きな達成だ、しかし、これはあくまで「ベター」な結末。

「敵地等々力で、王者川崎さんに勝ち点1を取れて自信になります。でも、逆転できる力をつけたい」と伊藤監督。チャンピオンとの距離を認めながらも、「勝ち点1が大きなものを生む」と、次のステップを貪欲に見据えていく。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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