サガン鳥栖が6位に浮上してきた。今季から川井健太監督が指揮を執り、メンバーも大幅に入れ替わった「新生サガン」はどんなところに魅力があるのだろうか。4月29日の明治安田生命J1リーグ第10節で柏レイソルを4-1で破った一戦に、そのエッセンスが詰まっていた。

上写真=柏まで集まったサポーターとともに勝利の喜びを分かち合う。鳥栖がいま面白い!(写真◎J.LEAGUE)

文◎国吉好弘

ピッチに立った16人中9人が新加入

 J1第10節の柏レイソルとのアウェーゲームで4-1と快勝したサガン鳥栖は、3勝6分け1敗として6位に浮上した。「ハードワークし、ルーズボールの競り合いで勝つ」(飯野七聖)プレーをベースとしながら、雨の降りしきる中でもピッチコンディションが良好であったこともあって、ワンタッチ、ツータッチで小気味良くパスをつないで、主導権を握って試合を進め4ゴールを集めた。

 今シーズンの鳥栖は昨シーズンのレギュラークラスがごっそり抜け、新加入が18人とチームの半数以上が入れ替わった状態でスタート。監督も昨季まで3シーズン指揮を執った金明輝前監督から、J1での采配は初めての川井健太監督にバトンタッチした。この日のスタメンでもDFジエゴ、ボランチの福田晃斗、シャドーの堀米勇輝、1トップを務めた小野裕二の4人が新加入組(福田、小野は2度目の加入だが)、さらに途中交代出場した菊地泰智、藤田直之、荒木駿太、垣田裕暉、藤原悠汰の5人は揃って新加入(藤田も2度目の加入)で、プレーした16人中9人が新しい顔ぶれだった。しかし、ボールの動き、人の動きとも連動、連係がスムーズで、チームとして機能し、見ていて楽しいサッカーを展開している。

 中でも目に付くのが堀米や小野、加入したのは昨季途中からだが、今季から左のウイングバックを務める岩崎悠人など、かつてその才能が高く評価されながら近年なかなか本来のプレーが出せていなかった選手たちが躍動している点だ。それぞれに不調だったのはケガなどの要因も大きかったのだが、今季の鳥栖でははつらつとプレーし、それぞれがサッカーを楽しんでいるように映る。

 宇佐美貴史(ガンバ大阪)を旗印とした「プラチナ世代」でも屈指のテクニシャンと言われた堀米は、その技術を生かしてライン間で受け、的確かつアイディアのある展開を見せ、同じ世代でいち早く欧州へ渡った小野も持ち味のアグレッシブさを取り戻して前線で起点となり、プレスの急先鋒となった。東京オリンピック代表の有力候補だった岩崎も持ち前のスピード、運動量を生かして激しく上下動し、左サイドを活性化している。

 また昨季プレーした新潟でくすぶっていたわけではなかったが、3シーズンぶりの復帰を果たした福田はボランチとして的確なプレーで攻守に関わり、この日も3点目を鮮やかなダイレクトシュートで決め、本田風智の先制点をロングスローからのバックヘッドでアシスト、飯野の4点目も逆サイドまでよく見たパスでアシストするなど結果も残した。ボランチでコンビを組む小泉慶にしても、サイドバックで使われるなどチーム事情を優先された感のあった鹿島から昨季途中で移籍してきて本来のポジションに定着。中盤での守備力はリーグでもトップクラスの実力を示している。リーグでも屈指のボランチのコンビは、ここへきてさらに成長した姿を見せている。

 挙げていけばきりがないが、今季あるいは昨季途中から加わった選手たちが本来の持ち味、ポテンシャルを存分に発揮できていることが現在の鳥栖の好調の原動力となっている。

 その「再生」ぶりについて、川井監督は「選手たちの以前のプレーには興味がないので特別なことはしていませんが、トレーニングの中で選手たちがよく話をして(やるべきことを)共有できていることで良いプレーができているのではないでしょうか。それとチーム内の競争が激しいことでそれぞれが切磋琢磨できている」と語り、チーム作りと競争の中で選手たちが能力を発揮している結果だという。

 競争力という意味ではこの日も先制ゴールを挙げた本田や清水へ移籍した松岡大紀をはじめ、中野伸哉ら次々に若手が台頭してくる下部組織の充実や、菊地、荒木、藤原、佐藤響など大学から加入してくる選手が確実に戦力となるスカウトの力もあり、「再生組」に加え、プロになる前にはそれほど知られていなかった選手たちが成長して見せる鳥栖サッカーから目が離せない。


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