明治安田生命J1リーグ第37節で、徳島ヴォルティスが湘南ベルマーレとの残留争い直接対決を1-0で制した。決勝ゴールを生み出したCKを蹴ったのは岩尾憲。スタッフと選手の揺るぎない一体感が形になった一発だった。

上写真=ポヤトス監督に思い切り抱きしめられる岩尾憲。勝利の喜びをかみ締めた(写真◎J.LEAGUE)

■2021年11月27日 明治安田生命J1リーグ第37節(@レモンS/観衆6,428人)
湘南 0-1 徳島
得点者:(徳)岸本武流

「少しクイックにボールを入れるという修正が」

 そのとき、岩尾憲はいつもより少しだけ急いだ。66分の左からのCK。

 ニアに味方も敵も寄せておいて、できたファーのスペースにストレートボールを送り込む岩尾のテクニックは会心だった。走り込んできた宮代大聖がしっかりとボレーでたたき、GK谷晃生が弾いたボールを岸本武流が押し込んで、これが決勝ゴールになった。

 急いだ、というのは、蹴るタイミングのこと。

「前日のコーナーの練習はもう少しセットした状態で行っていました。ただ、セットする時間を待つと湘南さんはセットプレーに対してアラートかつタフなので、気づきにつながる時間を与えてしまって狙いがバレてしまうかもしれないという話が、前迫(雅人)コーチからありました。なので、前日練習と今日で変わった点として、僕らは早くオーガナイズを作って少しクイックにボールを入れるという修正が今日入りました。そういったところでも前迫コーチのアラートさが得点につながったと思います」

 分析担当コーチによる鮮やかなスカウティングと、それを生かしたベンチワークと、選手の技術のコラボレーションだ。

 湘南と残留争いの直接対決で、ともに勝ちたいが、負けたくない無意識が働いて、前半はお互いに無理はしない流れ。

「相手のプレスを見て、ある程度ボールを持てることはすぐに分かりました。ただ、ボールを持てたとしてもどこに穴があり、相手の守備の受け渡しを含めてどこにひずみがあるのかはポジションチェンジしながら試行錯誤しました。相手もかなり整理されていて、効果的なボールの動かし方はあまりできなかった前半だったと思います」

 まさしく徳島のコントロールタワーである岩尾はしかし、落ち着き払っていた。

「とはいえ、サッカーは90分です。相手が良いオーガナイズをする中でギャンブルのようなプレーを選択するのではなく、焦れずにプレーすればどこかでチャンスが来ると思いながら前半は様子も見ていました。それは、決して無駄ではありませんでした」

 後半になると、反動的にどちらのチームも攻めに出た。

「後半、すぐ良い形で崩せる場面が出てきたので、前半のジャブが効いたところもあったと思います」

 後半は西谷和希がサイドに張って足元で受け、ワンツーで突破するように微調整すると、何度も裏のスペースを突くパターンがはまった。決勝点につながるCKを獲得した流れがまさにそう。西谷が左ワイドで受けて宮代大聖に預けるとワンタッチでボールが出てくる。深く入って仕掛けにかかり、その内側を宮代が走り抜けて裏を取ったところにボールをつけると、相手が寄せてきてクリアがゴールラインを割ったのだ。ジャブからのフックがきれいにはまった、とでも言おうか。

 これで湘南と勝ち点36で並んで、17位のまま残留の行方は最終節へ。勝利を収めた上で、あるいは引き分けでも、清水と湘南の結果を待つことになるが、徳島はその90分をしっかりていねいに戦うだけだ。

「勝ち点3を今日取れたことは一定の満足があります。ただ、一方では何も得ていないという現状もあります。次は今年最後のゲームになるので、しっかりと勝ち点3を、ホームで、全員でつかみ取り、あとは天命を待つというところを目指して、再び1週間、良い準備をしたいと思っています」

 待ってろ、サンフレッチェ。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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