川崎フロンターレの2021年の功績は、J1連覇で異論はないだろう。だが、鬼木達監督にとっては選手たちの成長も同じぐらい大きな達成になる。レアンドロ・ダミアンですら「来日したときよりうまくなった」という環境だから、若手を中心に進化が続くのももっともだ。

上写真=鬼木達監督は川崎Fでのキャリアが浅い選手の成長を厳しくも温かく見守る(写真◎J.LEAGUE)

「サッカーの頭は整理されてきている」

 川崎フロンターレの2021年シーズンはJ1リーグ2試合と、天皇杯の準決勝、そして勝てば決勝と最大で残り4試合に迫った。J1ではすでに連覇を達成し、鬼木達監督が就任してから4年、無冠の年はない。

 タイトルという果実とは別に、鬼木監督にまた別の悦びをもたらすのが、選手たちの成長だ。11月25日に契約延長合意が発表され、4年目のシーズンに向かうことになったレアンドロ・ダミアンもその一人だ。

「単純にうまくなりましたね。最初はボール回しで取られていましたけど、いまは楽しんでやっています」

 ブラジル代表だった経歴を持つ選手でも、日本で成長することを示した。「名前のある選手でもおごることなくやり続ける姿勢がいろんな選手の信頼を得ていって、信頼を感じることでさらに力を発揮してくれました」と鬼木監督は見ている。「もともと持っているパーソナリティーかもしれませんが、新しく来る外国人選手も巻き込んでいい方向に持っていって、人間としても素晴らしい」ことが、成功の秘訣というわけだ。

「うまくなったのはシュート自体もそうで、練習を重ねるようになって、来日したときよりシュート力も上がってきているし、いろいろな意味で成長しています。できることが増えてきたと思います」

 だから、今季は日本でのキャリアハイとなる20ゴールを挙げることができて、得点ランクトップの前田大然(横浜F・マリノス)にあと1と迫っているのだ。

 それだけ実績のある選手でも成長できる環境だから、このチームでのキャリアが浅い選手にとってはなおさらだ。旗手怜央、遠野大弥、宮城天、知念慶、橘田健人、塚川孝輝、小塚和季、イサカ・ゼイン…。鬼木監督もそれがうれしい。

 彼らは「手伝いたくなる」選手なのだという。

「みんな単純にすごくポテンシャルが高いんです。だから、もっとがむしゃらというか、ポジションを奪ってやるんだという姿勢というか、それを出していないわけではないですけど、もっと出していいのかなと思います。
 遠慮しているわけではないけれど、でも誰が見ても『こいつは勝負しているな』という姿勢は周りも刺激を受けますし、手伝いたくなるというか、年上年下関係なく、サポートをしたくなったりするんです。うまくいくかいかないかはどうでもいいというか、そういう姿勢が選手を変えていきます」

 言葉だけではなく、リアルにレベルの高い競争を求める鬼木監督だからその目は厳しいが、「チャンスを逃してほしくない」という思いがあるからだ。

「選手の寿命は長いわけではないので、チャンスを逃してほしくないし、気づかなければいけない。そういうものだと思います」

 気持ちの面でがむしゃらさを求めるのも、「サッカーの頭は整理されてきている」と評価しているから。「高い要求をしすぎるのは良くない」と心得ていて、「力がついたらまた高い要求を」と段階を踏んで声をかけ、みんなが成長してきた。だからこそ、こんなユーモアも言える。

「健人なら、いままでなら大目に見ていたターンの技術も、そろそろもうこっちを向かなきゃだめだよね、とか、小塚ももっとあの技術で突き抜けていいんじゃないか、とか、大弥も徐々に整理はされてきて勢いがある選手です」

 強いフロンターレは、そんな地道な過程があってこそ。


This article is a sponsored article by
''.