浦和レッズのMF阿部勇樹が2021年11月14日、今季限りでの現役引退を発表した。1998年にジェフユナイテッド市原で当時史上最年少でデビューしてから、もう23年。プロサッカー選手として駆け抜けてきた思いを涙まじりに語った。

上写真=阿部勇樹はファン・サポーターに最大級の感謝を伝えた。「みなさんの存在が、40歳までやらせてくれたと思っています。本当に感謝しかありません」(写真◎サッカーマガジン編集部)

「11月14日」の特別な意味

 浦和レッズの阿部勇樹が11月14日、現役引退を表明した。

 初めてAFCチャンピオンズリーグでアジアチャンピオンに上り詰めたのは、2007年の11月14日のこと。埼玉スタジアムで行われた決勝第2戦でチームの2点目を決めて優勝に貢献した男が、14年後の同じ日に、引退を明かした。

「その日に2007年のACL優勝があったことも覚えていて、ぴったりなんじゃないかと思って(発表を)14日にさせていただきました」

 深い意味のあるこの日に発表した引退は、シーズン当初から決めていたという。

「今年が始まった時点で、年齢を考えて最後の年になるのではないかと思っていました」

 覚悟の2021年だった。

「もちろんいまでもサッカーをしたい思いはありますが、1年前にサッカーをしたいという思いと、現在サッカーをしたいという思いに変化、差があると思っています。その差が僕にとっては引退する合図なのかなと自分では思って決断させてもらいました」

オシムさんとミシャさん

 ジェフユナイテッド市原の育成出身で、まだユースに所属していた1998年8月5日、ガンバ大阪戦で当時の史上最年少記録となる16歳333日でJリーグデビュー。プロのキャリアがスタートした。

「思い出としては、2005年にナビスコカップで優勝したときに、優勝したことがないので喜び方がわからなかったのを懐かしく覚えています」

 2007年には浦和レッズへ。イングランド2部のレスターでプレーした時期もあったが、赤のユニフォームのために戦い続けてきた。ACLの2度の優勝など、トップランナーとして先頭に立って引っ張ってきた。

「ここ最近は本当にいろいろ振り返っているんですけど、心残りは、一つ挙げるとしたら、浦和レッズは昨年からの3年計画で、いま2年目。次の3年目を一緒に戦えたらという考えもありましたけど、それができずに申し訳ない」

 このクラブを未来へつなげるためのプロジェクトに参加できないことを悲しんだ。

 だが、別の未来がある。今季いっぱいはリーグ戦の残り3試合と天皇杯に選手として全力を尽くすが、そのあとは指導者を志す決意だ。目指すのは、ここまで導いてくれた2人の恩師。千葉と日本代表でともに戦ったイビチャ・オシム、そして浦和での指揮官となるミハイロ・ペトロビッチだ。

「考え方を変えてくれたイビチャ・オシム監督には本当に感謝しております。まだまだ若い僕に何が足りないのか考えるきっかけを与えてくれた監督です。その教えはいまでも大事にしていて、忘れずやっていこうかと思っています」

「ミシャさん(ペトロビッチ)には、サッカーを楽しめと言われました。自分が楽しんでいなければ見ている人を楽しませることはできません。自分がトレーニングや試合で楽しんでプレーすることが大事で、それを大勢の方に伝えることが大事だと学びました。そういう考えを大事にして、新しいチャレンジに向けてやっていきたいと思います」

 自分で自分のことを「本当に泣いてばかりで、泣き虫でした」と表現した。そんな少年は、40歳までチームのために、仲間のために、ファン・サポーターのために戦い続ける鉄人になった。「サッカーが好きでたまらない」自分を信じて、これからは次の阿部勇樹を導いていく。そのキーワードはもちろん「考えて、楽しくサッカーをプレーする」だ。

阿部勇樹 あべ・ゆうき
■生年月日 1981年9月6日生まれ(40歳)
■出身地 千葉県市川市
■ポジション MF
■身長/体重 178cm/77kg
■サッカー歴 富美浜FC→市川FC→ジェフユナイテッド市原ジュニアユース→ジェフユナイテッド市原ユース(1997~1999年トップチーム登録) →ジェフユナイテッド市原・千葉→浦和レッズ→レスターシティFC→浦和レッズ
■Jリーグデビュー 1998年8月5日 G大阪 3-2 市原 ※ユース在籍中・16歳333日は当時史上最年少記録
■Jリーグ初ゴール  1999年4月10日 神戸 4-3 市原 ※ユース在籍中
■獲得タイトル
J1リーグ1stステージ(2015)
J1リーグ2ndステージ(2016)
Jリーグカップ(2005、2006、2016)
天皇杯(2018)
AFCチャンピオンズリーグ(2007、2017)
スルガ銀行チャンピオンシップ(2017)
■個人タイトル
Jリーグベストイレブン(2005、2006、2007、2016)
Jリーグカップ ニューヒーロー賞(2005)
■代表キャップ 53試合出場、3ゴール 
※2010FIFAワールドカップ 南アフリカ 日本代表メンバー(4試合出場、ベスト16)
※AFCアジアカップ2007 日本代表メンバー(6試合出場、ベスト4)
■世代別代表歴
アテネオリンピック2004 サッカー 日本代表メンバー(3試合出場)

阿部勇樹出場記録

シーズン所属チーム背番号リーグリーグカップ天皇杯ACLクラブW杯その他公式戦シーズン通算
1998市原(J1)311 / 00 / 00 / 00 / 01 / 0
1999市原(J1)2930 / 12 / 01 / 033 / 1
2000市原(J1)825 / 03 / 03 / 231 / 2
2001市原(J1)617 / 32 / 02 / 021/ 3
2002市原(J1)624 / 13 / 04 / 031 / 1
2003市原(J1)627 / 33 / 00 / 030 / 3
2004市原(J1)624 / 55 / 11 / 030 / 6
2005千葉(J1)633 / 1210 / 51 / 044 / 17
2006千葉(J1)633 / 118 / 21 / 03 / 145 / 14
2007浦和(J1)2233 / 30 / 01 / 012 / 33 / 03 / 052 / 6
2008浦和(J1)2233 / 11 / 01 / 04 / 039 / 6
2009浦和(J1)2234 / 24 / 00 / 038 / 2
2010浦和(J1)2220 / 32 / 122 / 4
2010-2011レスターシティ(ENG)2236 / 12 / 02 / 040 / 1
2011-2012レスターシティ(ENG)2216 / 12 / 01 / 019 / 1
2012浦和(J1)2234 / 44 / 03 / 041 / 4
2013浦和(J1)2233 / 65 / 00 / 06 / 144 / 7
2014浦和(J1)2234 / 47 / 11 / 142 / 6
2015浦和(J1)2234 / 32 / 24 / 15 / 02 / 047 / 6
2016浦和(J1)2234 / 14 / 11 / 06 / 02 / 147 / 3
2017浦和(J1)2233 / 31 / 01 / 011 / 02 / 02 / 150 / 4
2018浦和(J1)2227 / 15 / 05 / 037 / 1
2019浦和(J1)2211 / 01 / 03 / 06 / 01 / 022 / 0
2020浦和(J1)223 / 00 / 03 / 0
2021浦和(J1)2212 / 36 / 01 / 018 / 3
通算641 / 7782 / 1337 / 450 / 45 / 013 / 3827 / 101
※2021年11月14日現在。出場数/得点。レスターでの「天皇杯」の欄はFAカップの成績

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