川崎フロンターレがJ1と天皇杯の「W連覇」へラストスパートだ。過酷な連戦のあと、3週間ほど時間ができたチームにとっては、たっぷりの休養と積み上げの両方を行う大事な日々。その間に行われた日本代表のワールドカップ予選ではOBの守田英正と田中碧が大活躍。刺激を得て、鬼木達監督もさらなる進化へ意気込むのだった。

上写真=「かなり疲れていた」という鬼木達監督もしっかり休養。「サッカーから離れてぐたっとしていました」と笑う(写真◎スクリーンショット)

「驚きがあるのが楽しみでもある」

 川崎フロンターレは10月2日のFC東京戦で過酷な連戦を乗り越え、ようやくのオフ。24日の清水エスパルス戦までの3週間ほどの時間を活用して、しっかりと休養を取りながら、ラストスパートに備えている。

 そんなちょっとした「秋休み」にあっても、川崎Fが話題になった。10月12日に行われたカタール・ワールドカップアジア地区最終予選で、日本はオーストラリア相手に絶対勝利を求められていた。そこで、ともに川崎Fで成長した守田英正、田中碧がこの最終予選で初先発、布陣も川崎Fに近い4-3-3になり、田中は代表初得点となる先制ゴールも挙げるなど、ともに2-1の勝利の原動力になったからだ。

 守田は試合後に「僕は碧に『たぶん決めるよ』って声をかけていたんです」と明かしている。周りにそう思わせる雰囲気を漂わせるのが田中という選手なのだと、鬼木監督もうなずく。

「やっぱりそういうところはあるんじゃないですかね。すごくポジティブだったり、やってやろうというものを表現できる選手なので、それがいい方向に向いているときは結果として表れると思います。それはたぶん守田にも可能性はあったのではないかと思いますが、よりチームのバランスを考えながらやっていましたね」

 監督という立場では「素直にすごいと思いました」。勝負どころで覚悟を示した森保一監督の大胆な決断力に感銘を受けたと明かした。日本代表が一つの変化を示す中で刺激をもらって、川崎Fにも日々、進化をもたらさなければいけない、と感じているという。では、どこへ向かっていくべきなのだろうか。

「そこは本当に難しいところですけど、人をどういう形で生かしていくか、でしょうね」

 鬼木監督自身も2020年シーズンを前にして4-3-3の布陣で戦うことを決めてじっくり練り上げ、圧倒的な強さを獲得することになった。今季は選手の入れ替わりに合わせて、それぞれの特徴に最適化させる戦いを組み込んで、2020年とはまた違ったスタイルを築き上げている途中だ。ここから、どういうチームを作り上げていくのだろうか。

「チームで共有しやすいほうがパワーが出るのかな、とか、そのイメージは何を組み合わせることで一番パワーが出るだとう、と考えながらやっています」

 チーム作りのゴールは「人を生かす」。そのために、どのような組み合わせが最大出力につながるのかを考える。そこに、鬼木監督なりの自信と葛藤がないまぜになって、だからこその面白さを感じている。

「選手にとってもそんなに考えなくても体が動く、というか、こういうときはこうなるよね、と共有できるものを増やしたいですね。ただ、それを形に当てはめると面白くなくなるかな、とも思うんです。そこに迷いはあります」

 メリットとデメリットの両方が見えていて、バランスをどこに置くかを考える。

「形を作るとより考えないで済んで、オートマチックになって早くなる部分が増えるでしょう。でも、それが自分たちのやっていた面白みにつながるかどうかといったら、難しかったりもします。対策もされるでしょうし」

 そんな思考の行ったり来たりを経験するからこそ、鬼木監督と川崎Fはまた進化していく。そして、こんな結論にたどり着く。

「最後に選手がイマジネーションを出せる状況のサッカーを、やっぱり作りたいですよね。もちろん再現性があることも大切ですけど、同時に練習でも『そういうプレーも出すんだ!』という驚きがあるのが楽しみでもあるので、兼ね合いが難しいけれど、やっぱり最終的には選手の良さを出しながらサッカーをするというところは変わらないですね」

 今季も残りはリーグ戦6試合と天皇杯のみとなった。J1では消化は1試合多いものの、2位の横浜F・マリノスに12ポイント差をつけて首位で、天皇杯ではベスト8入りしている。シーズンの最後のヤマ場が待っている。

「天皇杯をすべて含めても、残りは10試合を切っています。ここからどれだけ自分たちのパワーや執念、執着心が出せるかになってきていると思います」

 選手の成長とチームのさらなる進化、そして2つのタイトルと、すべてを手に入れるための「総仕上げ」が、いよいよ始まろうとしている。


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