9月26日、川崎フロンターレが湘南ベルマーレに劇的な逆転勝利を果たした明治安田生命J1リーグ第30節。アディショナルタイムに家長昭博のクロスに知念慶が合わせたゴールで勝利をもぎ取ったが、そこに「FWジェジエウ」の絶妙なポジション取りがあったことも記しておきたい。

上写真=ジェジエウが山根視来と勝利を喜ぶ。最前線に上がって劇的逆転ゴールに貢献した(写真◎小山真司)

「団結力、一体感が表現できています」

 川崎フロンターレが誇る屈強なセンターバックのジェジエウが、FWにコンバート?

 J1第30節の湘南ベルマーレ戦ではベンチスタート。74分にピッチに入ると、いつものように右のセンターバックで壁となり、湘南のカウンターを阻止していた。試合は前半のうちに先制されながらも旗手怜央のゴールで追いついて1-1のまま進んでいたのだが、90+3分、GKチョン・ソンリョンからのロングキックを受けるために最前線へと上がっていった。ベンチから試合を見ていて、前線でチャンスが作れそうなので、自分が入ったら何かができればいいと考えていたのだという。

 その「何か」が起こった。

 ペナルティーエリアの中、中央でセンターフォワードのように危険な場所に陣取ると、そこに左のマルシーニョからクロスが送られてくる。相手に先に触られてしまったのだが、こぼれ球を旗手が拾って左深くに持ち出したあと、脇坂泰斗、橘田健人、山根視来、家長昭博と右に渡っていった。家長が相手をブロックして戻りながらキープする間にポジションを取り直し、クロスが上がったときには再びゴール前へ。最後は知念慶がヘッドで決めたすぐ後ろにいたから、ジェジエウが決めることもできたかもしれない。それぐらい絶妙なポジション取りだった。

「もちろんまずは自分が決めることを考えていたんですけど、あの時間でエリアの中で何かができればいいと思ってあのポジションにいたんです。自分がいることによってセンタリングでハイボールが来たときに何かが起きるんじゃないか、直接プレーに関与するだけではなく、ディフェンダーに対して何か難しさを与えることができると思ったんです。自分が競ることで誰かにセカンドボールがこぼれたり、とにかく結果だけがほしかったので、何かできればと思ってペナルティーエリアでボールがこぼれるようにプレーしました」

 そこにいたからターゲットになってマルシーニョがクロスを上げたし、そこにいたから家長のラストパスにも合わせられる距離だった。

 旗手がセカンドボールを拾ったプレーも、それをつなげて右に展開したパスワークも、家長の惚れ惚れする職人技のストレート系クロスも、足をつりながらも集中した知念のポジション取りも、すべてが素晴らしかった。そして、ジェジエウの隠れた貢献――何かを起こす存在感――も劇的勝利につながっていた。

 その歓喜の一発を決めた知念の成長は著しい。練習でDFとして迎え撃つジェジエウは、彼の伸びを高く評価する。

「ディフェンダーにとってはマークのしづらい選手だと日頃から思っています。力強さがあり、ゴールに背を向けてもボールを受けてキープできますし、ヘディングも高い位置でボールにアタックできます。昨季のレンタル移籍から今季戻ってきて、ずっと力強さを感じています。以前からキープ力はすごかったんですけど、さらに前を向くところも学んできたのではないでしょうか。そして、いい意味のずる賢さが身についてきています」

 苦しい試合だったが、勝負の5連戦で3連勝を記録した。宮城天、知念と2試合連続で若手がアディショナルタイムに逆転ゴールを決めるドラマチックな勝利で「団結力、一体感が表現できています」と胸を張る。

 次は「FWジェジエウ」のゴールが見られるかもしれない。

写真◎小山真司


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